第11話 長い物には巻かれます
建築会社にお勤めだったS様、年齢の割にと言っては何ですが、非常にガタイの良い方です。
お仕事上もあって建てつけには一家言お持ちなので色々気になる事がある様で‥‥。
職員C
「Sさん、そろそろお手洗い行きませんか?」
S様
「そうだな〜。行っとくか!」
2人はトイレに向かい歩き始めましたが、S様がふと立ち止まりました。
S様
「誰だぁぁっ!こんな所に手すりつけたのは!」
C
「Sさん!これ、必要だからついてるんです。
使う人がいる‥‥」
S様
「必要だからと言ってつければいい、って訳じゃないだろうっ‼︎」
そう言いながらS様は手すりに取り付き引っ張り始めました。
凄い力で引っ張ったのでしょう。ミシミシと音がする程です。
C
「Sさん!止めてください!取れちゃったら困ります!」
S様
「なんだと〜!オマエっ!ヒヨッコの癖に生意気だ!現場監督呼んで来い!」
職員Cを罵りながらも手すりを引っ張り続ける
S様。Cも必死になってS様が引っ張るのと反対方向に手すりを押しながら叫びました。
C
「誰か!現場監督呼んできて!」
そこへ様子を見守っていた職員Dが落ち着いた様子で歩み寄りました。
職員D
「何をやっとるんだね?2人とも。」
因みに職員Dは21歳です。見かけは‥‥なんと言いますか、ボンヤリしてると言うか、動物で言うと羊に似ています。
S様
「あっ!監督!こいつがこんな所に手すりつけやがったんですよ!」
C
「いやっ、あのっ、僕がつけた訳じゃなくて、最初からっ」
S様
「オマエがつけたんだろ!今更何をっ⁈
監督!さっきから言い訳ばかりしやがるんですよ!コイツ!」
Dは落ち着いて返答を続けます
D
「S君、この手すりは私がここにつける様に言ったんだが、何かね?君はわたしの指示が不満と言う事かね?」
Dは建築現場、と言うよりドラマに出て来るどこかの重役さんの様な口調です。オマケにお客様に対して「君」付けになっています。
それでも違和感は無かったのでしょう、S様は
焦ったように言いました。
S様
「いやっ、そうでしたか!それならそうと言えば良いのに!いや〜、監督の指示ならわかります!いや〜、参ったなぁ!」
S様は頭を掻きながら言いました。
それを見て職員Dは頷いて言います。
D
「それで?君達はトイレに行く途中じゃなかったのかね?」
現場監督は急に話題を変えました。
もちろん職員Cは尻馬に乗ります。
C
「あ、そうです!ね、Sさん!トイレに行こうと思ってたんですよね!」
S様
「そうです、いや〜、どんだ邪魔が入っちゃって!」
D
「最初に行くと決めたら行く!人間初志貫徹が大事、わかるかね?さあ、2人ともトイレにいきたまえ!」
とても偉そうに言い放ちました。
C
「じゃ、Sさん、監督もそう仰っているしトイレ行きましょうか!」
S様
「そうだな、行くか!じゃあ監督、お言葉に甘えて」
そうして2人はトイレへと歩き出しました。
職員Dの顔も満足気にほころばせてスタッフルーム来て言いました。
D
「どうだった?俺。上手くいったよね?」
私
「うん、上手だった。すごくオッさんっぽさがでて良かった。」
日頃から「覇気がない」「爺むさい」と言われたのがまさに「役に立った」出来事でした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます