第10話 本来なら頂き物は禁止されておりますが

いつの世でも『おばあちゃん』は贈り物好き。

私の祖母もそうでした。

施設のおばあちゃんのプレゼントタイムは人目がなくなった夜間、巡視の時に捕まったりスタッフルームに攻め込まれて(有無を言わさず)置いていかれたり、巡視でスタッフルームをあけている間にデスクの上に置いてあったりします。

また、夜間は皆さんいつもと違う人間に変身される場合もあるので要注意です。


さて、巡視での事です。


そっとZ様の部屋に入ったらムクリと起き上がり仰いました。


Z様

「遅くまでおつかれさん。お腹空いたでしょ?」


「あ、みんなの所見回ったら夜食食べるから大丈夫よ〜」


Z様

「じゃあ、まにあった。これあんたにあげたくてとっといたから食べな」

(お布団の中をゴソゴソ)

「手、だしな。」


「いやぁ、いただけない事になってるから、

お気持ちだけ‥‥」


Z様

「それじゃ私の気持ちがすまないんだよ!世話になってるんだから!さ、手だしな!」


しかなく手をだす


Z様

「はい、トンカツ!」


ずっしりとした物が私の手のひらに乗せられました。


それは明らかに「夜、お手洗いに行くの忘れても安心!」なアレの使用済みのやつ。


「あ、あ〜‥‥りがと!何かな〜。楽しみだ〜」⇦トンカツ、と言われた事はすでにわすれている。


退室。



再び巡視にて


ドアの小窓から中を覗くとQ様がタンスの前でなにかしています。軽くノックし入室しました。


「Qさ〜ん、どうしました?眠くないんですか?


Q様

「あ、丁度よかった。これ、上げるからおいしい物でもたべてよ。」

と、私のエプロンのポケットに突っ込む


「ん〜、でも皆さんからは頂き物しちゃいけない決まりなんですよ。お気持ちだけ‥‥」


間髪入れず

Q様

「一度出した物は引っ込められないんだから、貰っといてよ。」


「あ〜、じゃあ今回だけですからね!つぎは無し!ですよ!」

(ご家族に報告しよ。)


その頂き物をスタッフルームにもどり取り出すとティッシュで長方形にくるんだ物。

祖母がコッソリ渡してくれた物に良く似てます。


(ん、これは良く貰った事がある例の物に似てる。どれどれ?)


ティッシュを剥いでいくと‥‥ティッシュ、また剥ぐとティッシュ、その下もティッシュ、

ティッシュ&ティッシュ。


(うん、やっぱり本物をくれるのは親族だけだな!)


Z様再び


夜22時過ぎた頃だったでしょうか。

Z様がスタッフルームに向かって歩いていらっしゃいました。


「(あ〜、嫌な予感が‥‥)Zさん、どうしました。」


Z様

「今日は出掛けて買物してきたから、あげたい物ががあるんだよ。」


「イヤイヤ、せっかく買ってきたんだからご自分で大切にすればいいのに。(嫌な予感が‥)」


Z様

「いや〜、あんたがミカン好きって言ってたから息子に言ったらアンタの分も買ってくれたから、貰ってもらわなにゃ。」


「(え?厚かましいと思われるでしょ)ん〜。本当に困るなぁ。」


Z様

「まぁ、良いから!ほら、ミカン!」


と、レジ袋に入った『ミカン』を突き出します。


(やっぱり‼︎このパターンかっ⁉︎)

「んー、じゃあ、今度だけだよー?」⇦一応困り笑顔はしながら


やはり、お手洗いに行くのを忘れても安心な

あれ、でした。



すぐ捨てたのは言うまでもありません。

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