第9話 ご指名ですか?
介護施設で全体会議の時間を決めるのはなかなか難しいものがあります。日中はみなさん動きがありますのでなかなか手を離せません。出席率を上げる為には夜間に会議を開く事もあります。
それでもフロアを空にする訳にはいかないので
夜勤や遅番の職員は自分のフロアで業務にあたります。
ある夜の事、我がフロアの夜勤者から会議をしているフロアに内線が掛かってきました。
プルップルッ ⇦呼び出し音
職員
「はい、3階です」
職員B
「Tさんが離設(いわゆる脱走)しました!」
慌てふためき会議に参加していた職員がかけおります。Bによるとお部屋のベランダに面したガラス戸を鍵を壊して突破、鉄棒の前転のようにベランダ柵を越えたとの事です。
B
「確認した時は八つ墓村みたいに足が突き出てて、開けようとしたら向こうからドアにつっかえ棒してるみたいであかないんです!」
とりあえず、みんなで外に出るとT様は道路の電柱にもたれて街灯に照らされて佇んでいました。
みんなで近づき、戻ろうと訴えかけますがT様は
黙りこくり私達を鋭い目付きで見据えています。
やりとりが10分程続いた頃でしょうか、Tさんが突然指を差しながら叫びました。
T様
「オマエと‥‥オマエ‼︎2人だけ残って後は全員中に行け‼︎顔見せるなぁっ‼︎」
(えっ⁉︎私とC子⁉︎なんなの⁉︎この刑事物みたいな展開は‼︎人質なわけ⁉︎私達⁉︎)
呆然とした私、そこにC子が
C子
「まじ⁉︎指名は仕方ないとして、みんなは戻るわけ⁉︎しんじらんな〜い‼︎」
(指名がしかたない⁉︎いや、それよりセオリーで言えばみんな退却するのは当然でアンタが詰る方が信じらんないってば!話がこじれたら帰るの遅くなるじゃないの)
とりあえず手振りでみんなに戻るように示しました。
まぁ、なんとか説得し(最後の方は「私達がもう疲れたから帰ろう」と説得してましたが。)
1時間後、無事にT様を真ん中に3人で手をつないで帰ったのでした。
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