第5話 久しぶりに学校へ行ってみれば、クラスメイトが殺されてるなんて、あり得るのだろうか。
翌日。
俺はほとばしる汗を拭わずに、校舎の階段を駆け上がっていた。
目指すは屋上。
だが、四階から屋上に繋がる階段前では生徒らが群がっていた。
俺は間を掻き分け、前まで向かう。
視界に入ってきたのは、黄色いテープと仁王立ちする警察官の姿だった。
「おいおいマジかよ。学校で殺人事件なんてさ」
「何でも刺されたのは、一年C組の男子らしいよ」
「えっ? 死んだのって、桜井なのか?」
「昨日は授業をサボって、屋上にいたみたい。その時に誰かが」
周りの話し声は、俺にとって、ただの雑音にしか聞こえなかった。
桜井が死んだ。
どうも、俺がスマホで話していた後に刺されたようだった。
周りからはまだ、生徒らの話し声が届いてくる。
「でも、屋上って、鍵が閉められてるよな?」
「それだけど、職員室から屋上の鍵が盗まれたらしいよ」
「じゃあ、あれか。その殺された男子が勝手に鍵を盗んでいったのか」
納得したかのような生徒の声。
一方で俺は、逆だった。
「桜井が屋上の鍵を盗んで、授業をサボっていた? サボりをほとんどしたことがない桜井が、わざわざそんなことするか?」
俺は疑問が浮かび、考えてみるも、答えは浮かばなかった。
とりあえず、俺は生徒らを掻き分け、群がりから抜け出した。
「見に来たのね、八坂友則くん」
聞き慣れた声に、俺はすぐに視線を向けてしまった。
視界に、高塚が真剣みを帯びたような表情で俺に目を合わせてきていた。
「高塚」
「警察が呼んでるわよ」
「警察?」
「何でも、桜井くんが死ぬ直前、あなたと電話していたってことが、桜井くんのスマホの通話履歴に残っていたみたいよ」
高塚は言うなり、生徒らが群がる屋上とは反対側の階段を降りていく。
「おい、高塚」
「言ったわよね。わたしと話しかけるのもなしって」
「それは」
「今のは、クラス委員長として、クラスメイトを呼びに来ただけよ」
高塚は後ろ姿のまま、淡々と答える。
俺は頭を掻き、「わかったよ」とうなずく。
「一階の応接室に警察の方が待っているみたいだから」
高塚は口にすると、俺を置いて、階段を降りていってしまった。
俺はただ、消えていく背中を見送ることしかできなかった。
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