序章2 初めに言われたこと。
夫婦は合わせ鏡
五十の妻に
百の夫は
けぇへんねんで
++++++++++
平成3年5月15日 水曜日
この教えは、 わたしが一番初めにおばちゃんに言われた言葉です。
先の章で書いた通り、治る見込みがないと宣告されていた義母の目の病気の事を相談しに、早朝、決して近くない場所まで会いに行ったのです。
にもかかわらず、義母のことより、一緒に連れて行っていた息子(当時1歳11ケ月)の様子を見て、
「アンタら夫婦はどないなってんのや?」
と、聞かれました。
この時、おばちゃんと対面したのはわたしと息子のふたり。
配偶者は来ていませんでした。
にも、かかわらず…
おばちゃんの目には、息子を通して何かが視えたようでした。
まさかの展開で、話すつもりなんてなかったけれど、ひとつふたつと口にし出したら止まらなくなってしまいました。
わたしは、日頃、配偶者に対しての溜まりに溜まっていた不満が、愚痴が、辛い思いが、堰を切ったように涙とともに口をつきました。
その時に言われたのです。
『おばちゃんはな、夫婦は会わせ鏡やと思ってんねん。五十の器しかないアンタに百の器の旦那さんが来るかな?どうや?どう思う?
おばちゃんは、来ぇへんと思うなぁ。
もし、素晴らしい百の旦那さんと添うてても、五十の器しかないアンタやったら、その素晴らしさを受けきらんと半分はこぼしてしまうわな。
アンタが旦那さんにひとつ不満を持つやろ。 その時、相手はふたつの不満をアンタに持ってると思ってみなさい。
わかってくれへん…
○○してくれへん…
こうしてくれたらいいのに…
あぁしてくれたらいいのに…
あんたが思う2倍の量の不満を旦那さんに持たせてると思ったら、そしたらそんな風に、相手の悪態つけるかな?
あぁ、自分にも至らんとこがあるかもしれんなぁ…。
自分も悪かったなぁ…
と思えるんと違うかな?
それとも、なにか?
自分が正しいと思ってるんかな?
旦那さんのこと、尊敬してるか?
アンタ、今、旦那さんの悪口、何個言うた?
10個以上は言うたで。
ほんなら、旦那さんは20個、アンタに不満があるってことや。
夫婦で不満の数、足したら30個やな。
お互いにそんな不満だらけで、ええ家庭が築けますか?
築けるわけないんちゃうかな…
子どもにしたら、えぇ迷惑や!
よぅ考えなさいや。
自分の選んだ旦那の悪口を言うってことは、自分で「わたしは男を見る目がありません…」って宣言してるんとおんなじやで。
それって、恥ずかしないか?
相手の悪いところを探すよりええとこ見つけて感謝に変えてごらん。
「ありがとう」
って、口にだして言うてごらん。
「おかえり、お疲れ様」
って、笑って言うてごらん。
家の中の空気変わるはずやから。
だまされたと思って、笑って言うてごらん。
あんたが率先して「愛」を出してごらん。不満の数、減らす努力してごらん。
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わたし当時、28歳。
衝撃的な言葉でした。
「そんな明治時代のような生き方でけへんわ!」
「旦那を尊敬?どこを尊敬したらいいんかわからんし…」
と、いろいろ反論もしました。
いくら人生の先輩・年配者の方の言葉とはいえ、初対面の人に面と向かって、器が小さい…と、言われたのです。正直いい気はしませんでした。
でも、この日をきっかけにわたしの価値観が180度変わっていくのでした。
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