「い」

生きることが忙しゅうて

生かされてること

忘れてるんと違うか?


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この言葉は、半ば呆れられながら、つぶやくように言われました。


その頃の配偶者は、仕事仕事で家に帰らず、二晩三晩家を空けることはしょっちゅうでした。

その上、休みの日はゴルフ・・・。

接待だと言いながら、接待には見えない派手めのスタイル。

幼い子どもと家で待つ身のわたしとしては、いろんな感情に苛まれる訳です。


「家族のために働いてくれてるのはわかってる…でも、ほんとに仕事…?」


妻としては当然の感情ですよね…。

だって帰ってこないんですから。


そんな状況を、おばちゃんに聞いてもらった時に言われたんです。

ただ、この言葉はわたしに対してではなく配偶者に向けての言葉でした。


「配偶者君は、責任者という立場やから、そら、忙しいやろなぁ。そやけど、家に帰られんほどの忙しさって、なんやろ?職種にもよるし、急ぎのこともあるから一晩の徹夜なら百歩譲ろう。

でも、二晩三晩って…それもひと月に2回も3回もあるってどういうことや?

そら、アンタ(わたし)が、余計なこと考える気持ちもわかるなぁ。」


その外泊が、彼の言う通り、全部仕事やったとして…。


配偶者君は、なんで、ひとりで背負いこむんかな?

なんで他の人を信じて委ねることが出来へんのかな?

なんで出来へんかわかるか?


それはな、必死やからやねん。

「俺が俺が…」

で、必死やねん。

成果もそれなりに上がってるし、彼は今、有頂天で目先のことしか見えてないねん。

「必死」っちゅうんはな、必ず死ぬねん。

言い換えたら、無くなってしまうってことや。


なにも、ほんまに死ぬって意味とちゃうで。

いや…、いつかはほんまに死んでしまうかもしれんな。

そんな働き方してたら、今は協力してくれてはる提携会社も「勘弁してくれぇ~」って、逃げるし、部下も「やってられませんわっ!」言うて、離れていきまっせ。

無茶を言うてきてる張本人のお客さんまで、無理難題だけゆうて、利用して逃げまっせ。


で、結局。

俺、何してきたんやろ?

って、虚しさだけが残るんや。

言われてることに応えようとして精一杯頑張ってんのにな。

なんでかわかるか?


それはな、必死にも二種類あるんや。

俺がするからっ!

俺がやらなっ!

俺が、俺が…

って言うて、数字や実績ばっかり追いかけて生きてたら、神さんは「あぁ、そうかぁ」って、見てるだけやねん。

そやけど、神さんに感謝しながら、家族を大事にしながら、まわりの人に感謝しながら、必死になったら、

「アイツ、大変そうやなぁ。手ぇ貸したろかぁ。」

って、どこからともなく助けてもらえる。

数字も実績も、おまけに信頼も自信もついてくる。

これは、なにも配偶者君だけのことやないで。

みぃ~んな、そうや。

よう、親が子どもに言うやろ?

「ひとりで大きなった顔して!生意気なっ!」

って。

神さんも一緒やで。

人はひとりでは、生きられへん。

「ありがとう」言うて「お蔭様で」言うて頭下げるんや。

そやけど、その道理がわかってない生意気な奴は、ペシッっと鼻っ柱を折られるんですわ。

簡単なことなんやけどな…


人はな、生きてるんやおまへん!

生かされとるんです!




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