三鳳宮

 実は高雄に来たらぜひ行きたかった場所に、三鳳宮という廟がある。

 三鳳宮は哪吒なたという少年神を祀った廟で、台湾の哪吒廟の総本山だ。先程の蓮池潭でも中壇元帥を祀っている天府宮があったと書いたが、この中壇元帥が哪吒だ。


 哪吒は仙人の作った宝貝ぱおぺいという仙人の使う道具として作られた。それを母親の体に入れられて、宝貝を核にして、母親の腹から人間として生まれた。しかし元が宝貝なので力も強いし乱暴者。とうとう青龍の息子を殺してしまい、青龍の怒りを浴びて、父親の治める国は大変な被害を蒙る。そこで罪を詫びて自らの体を壊し、1度死んで小さな廟に祀られていた。そして天地あめつちの精気と人間の信仰心を力に、神様として生まれ変わった少年神……という、なかなかドラマチックな神様だ。


 封神演義でも大活躍する神様で、人間宝貝(?)のせいか、子供の姿をしてるのにメチャクチャ強い。

 また、西遊記で唯一、孫悟空に勝利した神様の1人でもある。

 まだ天界で暴れまくっていた孫悟空を岩の牢に閉じこめるために、天帝の息子である二郎真君と一緒に孫悟空と戦ってこれに勝利し、岩牢にぶち込んだのが哪吒だ。


 ということで、哪吒は降魔駆除の神様として有名だし、子供の守り神でもある。


 実は友人がずっとこの哪吒の研究をしていて、何度も中国の奥地まで足を踏み入れ、哪吒廟や関連施設のフィールドワークをして同人誌などにまとめているのだ。彼女の話を大学時代から聞き、研究旅行の本なども読み、「ぜひ機会があったら私も行ってみたいなぁ」と思っていた。


 もちろん、子供達も西遊記は知っているので、「孫悟空をやっつけた子供の神様だよ!」と言うと「孫悟空より強いの!?」と興味津々。


 それに、台湾に来る前年に、日本でやっていた「台湾100年祭」というお祭りを観に行った時、子供達は三太子(=哪吒のこと)の踊りを見ていたのだ。

 頭の大きなちょっと不気味可愛い三太子が、チャイニーズテクノにあわせて踊りまくっていたのは、子供達の記憶に新しい。


 この三太子、高雄の三鳳宮からやって来たと言っていた。

 お祭りの時以外三太子のお人形を見ることはできないそうだが、子供達には「台湾祭りの時の三太子がいるお寺だよ~」と言うと、「頭が大きいんだよね!」とくねくね踊り出して大喜びだった。


 さっそく拾ったタクシーで三鳳宮にタクシーで乗り付けたのだが。



 三鳳宮、改装中……orz



 うわ~~ん、すごい楽しみに来たのに~~~!!

 中もやっぱり足場だらけ……。

 うわ~~ん!!本当にすごい楽しみにしてたのに~~!!


 でも、足場が組まれていたのは入り口までで、中に進むと足場はなくなっていた。ああ良かった……。

 友人の本で何度も見た哪吒太子こと中壇元帥の像も無事に拝むことが出来た。

 ううぅ、写真で見てもそう思ったのだが、生で見てもおっさん臭い……。なんで少年神なのに、こんなにおっさん臭いのか……(失礼💦)


 3階には年神様(生まれた年の干支ごとに決められた神様。干支と言っても十二支ではなく、十干と十二支を組み合わせた、60年分の方の干支です)が祀られていて、自分の年神様にお詣りをした。ちなみに、わたくしは壬子の生まれですので邱徳将軍、パパ吉は丙午なので文折将軍、ぢぞ吉は癸未で魏明将軍、たぬ吉が丙戌で向般将軍でした。


 他にも玉皇上皇が祀られ、仏教の釈迦如来なども合祀されていた。


 日本の神道と仏教の合祀みたいに、台湾の廟も道教と仏教を合祀してる所が多かった。まぁ、封神演義とか読んでると、道教のお話の筈なのに仏教の仏様達も一緒になって戦ってるから、その辺日本よりもくくりが広いのかしら。



 そして三鳳宮を出ようと思ったら、最後に見た三鳳宮の門神様が。


 すっごい綺麗!!!


 黒い扉の板に、金色の細かい線で描かれた門神様は、本当に美しかった!!!

 色んな廟の門神様を見たけど、三鳳宮の門神様はピカイチだ~~!!


 皆様、高雄の三鳳宮にいらしたら、ぜひとも門の裏に描かれた門神様を見忘れないようにお願いしますよ!!!




 この後、「さすがに疲れたね~」「どっかでお茶したいね~」と言いながら最寄り駅の「市議会駅」まで歩いて行った。


 いつもは歩いているとどこにでもコンビニがあり、コンビニにはたいていイートインスペースがあるので、どこかしらでお茶くらい出来るだろうと高を括っていたのだが。

 

 しかし官公庁街だというのに全くお茶出来る所を発見できず……。三鳳宮からたくさん歩いて来たので、もう正直ヘトヘトなのだが、ここで「茶店を探そう」という方向には行かず……。


「この後どうする~?まだそんなに時間遅くないしねぇ……。」

「うん。帰るには早いよねぇ……。あ、関帝廟、行く?」

「ああ、ひょっとしたら、そっちにはなにかお店があるかもしれないし……」

「じゃあ、取り敢えず電車に乗っちゃおうか……」

 と、勝手に脚が駅に向かっていく。


 MRT電車の中は飲食禁止なので、水を飲むことも出来ない。電車に乗る前に、買っておいた水を飲み干して、「まぁ、どっかで飲めるさ」と私達は気楽に電車に乗ったのだった。

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