蓮池潭:北極亭


 孔子廟側から見て、すぐ手前にあるのが北極亭だ。

 北極亭には巨大な北極玄天上帝の像がどど~んと建っている。いや、まさにどど~んという感じ。何しろ、像の高さは21mもあるのだ。

 北極玄天上帝というのは、四方を守る聖獣(=四象)の中の、北を司る玄武(巨大な亀)が神格化した物だ。

 ……ん?ちょっと待てよ。この北極玄天上帝、足許に亀を踏みつけてるよ?玄武、元々亀なのにな……。


 北極玄天像に辿り着くまでの橋の脇には、道教の将軍がたくさん並んでる。私は封神演義のファンなので、知っている武将がいないかとついついチェックをしてしまうが、数が多すぎて分からない……。有名な武将はいないのか……?

 「北の玄武」などの四象は、五行説に説かれている。「五行説」というと聞き覚えのない人もいるかもしれないが、「風水」の名前は知っている人も多いだろう。「風水」は五行説を占いに転じた物で、日本人には今や身近な「五行説」だ。


 簡単に言ってしまうと、五行説とは「全ての事象は5つの要素から成り立っている。それらは互いに影響を与えあっており、生滅盛衰によって天地万物が変化して循環する」という思想だ。

 これを知っていると、中華圏のお寺や廟、様々な文化はちょっと楽しくなる。


 「五行説」を構成する要素は多岐に渡るが、取り敢えず代表的な、有名な物だけちょっと紹介しておこう。


 まず、「北」だ。北の四象は玄武(巨大な亀の聖獣)、色は黒、季節は冬、五行と曜日は水、臓器は腎臓、食べ物ではしょっぱいもの、八卦では水を司っている。


「南」の四象は朱雀(鳳凰)で、色は赤、季節は夏。五行と曜日は火、臓器は心臓、食べ物では苦いもの、八卦では火だ。


「西」は四象が白虎で、色は白、季節は秋、五行と曜日は金、臓器では肺、食べ物では辛いもの、八卦では天と沢。


 「東」は、四象が青龍で、色は青、季節は春、五行と曜日は木、臓器では肝臓、食べ物では酸っぱいもの、八卦では雷と風。


 そして西洋の「四大元素」との大きな違いとして、「五行」と言うからには「五行説」には「中央」がある。「中央」の四象は麒麟で、色は黄、季節は土用、五行と曜日は土、臓器では脾、食べ物では甘いもの、八卦では山と地。


「青春」が「春のくせに青い」のは、西の「青龍」が「春で青」=「青春」だからだ。朱雀は「朱夏」、白虎「白秋」、でも玄武は「玄冬」。「玄」は「黒」の意味だ。(可哀想に中央の黄色は四季が当てはまらないので、季節を呼び表す言い方はない💦)

 ちなみに、北原白秋の「白秋」は、この五行説から取ってきたらしい。



 さて、本題に戻って北極亭の北極玄天だ。


 この北極玄天は、明の時代には人気No.1だった神様で、高雄では今でもものすごい人気らしい。ホテルの近所にも北極玄天廟あったしな。


 しかしこの北極亭の賽銭箱がずるい。


 真ん中に金色の金があって、その左右に子供の像が立っている。像の前には5つのツボがあって、ここに「お金を投げ入れろ」と。

 お金を投げて、見事真ん中の金色の鐘の穴にコインが入ると、両脇の像が踊り出して太鼓をゴワ~~ンゴワ~~ンと鳴らし始めるのだ。


 ……もうね。もう、子供達夢中だよ……。


「入らなかったからもう1回!」「ゲームじゃなくてお賽銭だっつうの!」という会話を、きっと様々なおうちで繰り広げられていることでしょう……。北極亭に来た時には、ぜひゲーセン感覚でチャレンジしてはどうでしょうか……。



 北極亭の道路を挟んだ向かいには、孔子廟に近い側に天府宮(中壇元帥を祀っている。中壇元帥って、封神演義で有名な哪吒ナタのことですよ!!)があり、その隣りに紫玄宮(達摩だるま祖師を祀っている)が、それから北極亭の真ん前には護安宮がある。護安宮は神様のデパートみたいな廟で、1階には北極玄天上帝が、2階には観音菩薩が、3階には三寶大佛と四大菩薩が祀られている。


 後で知ったのだが、天府宮では無料のレンタル自転車を貸してくれるらしいので、「歩くのはちょっと……」と思われた方はチャレンジしてみては。

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