第13話 解放
有栖達が到着する少し前、黒い大蛇と交戦していた庵は、脇腹の強い違和感に反射的に手を当てた。
(……なるほど。確実にダメージを与えるためだったのか)
無数に跳んできた黒い蛇は、セレンだけではすべてを焼き切ることはできなかった。
絡んできた蛇は噛みつきや絞めつけによって、じわじわと庵の体力を削り取っていた。また、完治していなかった傷口もすっかり開いている。痛みを感じないのが唯一の救いだ。しかし、違和感は集中力を削る。
男が出現させた黒い蛇が、様々な方向から飛んできた。まだパンドラの箱には余力があるようだ。
セレンが炎を吐いて打ち落としていったとき、背後から男の笑みを含んだ声がした。
「特等位の名が泣くなぁ?」
「っ!」
大蛇が視界から消えていると気づいたときには遅かった。
背後から振り落とされた太い尾によって、セレンの翼が打たれる。
「ギャウウウウ!!」
「セレン……っ!」
庵の背中にも痛みはないものの、打たれた感覚は伝わった。
地面に叩きつけられ、反動で庵はセレンの背中から振り落とされる。身を捻って受け身を取ることはできたが、体が重く、すぐにセレンのもとに駆け寄れなかった。
翼と足が折れたのだろう。地に落ちたセレンは何とか立ち上がろうとするが、上手くバランスが取れずにまた地面に伏せていた。
「安心しろ。今は殺しはしない」
龍樹の場所を知る者を殺せば、永遠に手に入らなくなるも同然だ。
ただし、庵が簡単に場所を言うとも思えない。
「だが、このままではお前も場所を吐きそうにない」
「…………」
「場所を変えよう。それには、今のお前の意識は邪魔だ」
この場では邪魔も多い。先ほどいた透真ならまだしも、治安部隊の隊長と副隊長がこちらにやってくれば、さすがに形勢が傾きかねない。
セレンは、大蛇から下りて庵に近づく男に向けて炎を吐く。しかし、ダメージを負っているセレンの炎は普段よりも劣っており、あっさりと避けられてしまった。
鬱陶しいと言わんばかりに、大蛇が軽く尾を振ってセレンの体を打つ。
「やれ」
男に指示された大蛇の周りに黒い渦が無数に発生したかと思いきや、中から現れたのは渦と同色の槍だ。
庵とセレンを照準に捉えた大蛇が槍を放つ。
殺す気はないとはいえ、当たれば一溜まりもない。
(……むしろ、ここで殺されておくべきか)
生きていれば、龍樹の場所が漏れる危険性がある。庵に吐く気はないとしても、彼らには情報を得るための別の手段があるかもしれない。
こうなることも予想して龍樹を有栖に託しているが、パンドラの箱はそれを知らないはずだ。場所を知っているのも御巫の者だけ、と強調している。
悔いが残るとすれば、パンドラの箱を自らの手で壊滅させられなかったことくらいだが、万里や凪が近くにいるのであればそれも時間の問題だろう。
諦めた庵がセレンを解現して目を閉じたとき、緊迫した声が鼓膜を打った。
「バカか、お前は!!」
ハッとして目を開く。
青い炎が前方に壁を作り、飛来する黒い槍を燃やしていた。
声が聞こえた方へと庵が目を向ければ、一階の窓から飛び出した透真の姿があった。彼の傍らには、数個の青い狐火を浮かせた小太郎もいる。馬ほどの大きさになっているため、普段の愛らしさよりも凛々しさが勝る印象だ。
「そんな怪我で動こうとするな!」
「これくらい、まだ――」
大丈夫、という言葉は、駆け寄った透真に胸倉を掴まれたことで喉の奥に詰まった。
眉間に皺を寄せた透真は、鼻先が触れそうになるのも構わずに顔を近づけ、真っ直ぐに庵の目を見て言う。
「俺はお前の死を見届けるためにいるんじゃない。限度の分からないお前が、死なないよう見張るためにいるんだよ!」
――はぁ? 『苦痛』を感じない?
――……じゃあ、俺が見張っててやるよ。苦しいとか痛いっていうのも、人間の心の叫びだ。それが分からないってなると、下手したら死ぬぞ、お前。
――お前に死なれたら、堕ちた俺が戻った意味ないだろ。
「――っ」
ふいに、苦痛を奪われていると明かしたときの透真の言葉が蘇った。
あれから、彼はなるべく庵が視界に入る場所にいた。庵が怪我をすれば、普通の人からすればどの程度なのか、一緒に考えてもくれたのだ。
「またお前か。しかも、一度堕ちた経験のある基獣とは……」
「へぇ。よく分かったな。更正した奴だって」
「もちろん。響命力を視ればね」
男は興味深そうに透真と小太郎を見る。更正施設でも見かけたが、あのときはさほど余裕がなかった。
優位に立っている今、改めて透真の響命力を視れば、怨獣化した痕跡が小さなブレとなって現れている。このブレが再び大きくなると、基獣はまた堕ちてしまうのだ。
ふと、あることを思いついた男は、ポケットから欠片を幾つか取り出した。
「じゃあ、もう一度堕ちてみようか。大事な友人を、苦痛のない生活から解放するチャンスだ」
「透真……!」
男が上へと投げた欠片を、大蛇が尾で軽く打つ。透真に向けて。
いつの間にか、庵達の周囲には新たな蛇が湧いていたため、避けられる場所がない。
せめて、自分が盾になるか、と手を離した透真の肩を押そうとしたときだ。
「残念。俺は、今さらそんな欠片如きで堕ちるほど柔じゃない」
透真の前に立ちはだかった小太郎の足下から青い炎が噴き出し、瞬く間に広がっていく。蛇と欠片を飲み込み、跡形もなく燃やし尽くした。
唖然とする庵の襟首を引っ張ったのは、先ほどまで透真の前にいた小太郎だ。地を蹴って跳躍し、庵の背後に回り込んでいた。
「え」
「はい、確保ー」
透真が普段のテンションで言うと、小太郎はくわえた庵を放り投げて背中に乗せた。
また傷口が疼いたが、透真は指摘する暇を与えてくれなかった。
「手札は削った。悪いが、あとは頼んだぞ」
誰に向かって言ったのか。
庵がその相手を見つけるより先に炎の壁が消え、聞き慣れた声がした。
「はい。やってみせます」
「雪ちゃん……?」
「彼女は特等位だ。こんだけ派手に暴れて、気づかないわけないだろ」
姿を見せたのは、いつになく神妙な面持ちの有栖だ。
何故、彼女がここに、と顔に書いている庵に、透真は呆れながら理由を明かした。庵が異変に気づいたのなら、いくら特等位になって日が浅くとも、有栖が気づいてもおかしくない。
有栖は傍らに白銀と緋月を顕現する。それも、本来の姿として。いつもなら、二体同時の顕現時にはそれぞれが小さな姿となって顕現するのだが、龍樹から力を受け取ったおかげか、本来の姿でも身体への負担はない。後に出るのかもしれないが。
「彼女だけに任せるなんて危険だ。僕も――」
「邪魔になるから、お前は一旦、あっちで治療な」
「透真!」
庵の言葉を無視して、透真は小太郎と共に駆け出した。向かう先は、戦闘を終えた治安部隊のいる場所だ。
二人と一頭が遠ざかるのを気配で読んだ有栖は、震えそうになる足を内心で叱咤した。心を落ちつかせるため、息を深く吸って吐く。幸い、相手は有栖の出方を窺っており、すぐに攻勢に転じる様子はない。
白銀が地面を足で叩く。
大蛇が頭を僅かに下げる。
緋月が羽ばたこうと羽を広げる。
「お願い」
「喰え」
有栖と男の声が重なった。
白銀が地を蹴って駆け出し、大蛇の体の直前で高く跳躍。胴に着地すると同時に強く踏みつけ、響命力の塊を接した場所から叩き込む。振り回された尾には、角を突き出して対抗する。
空へと舞い上がった緋月は上空から火の粉を降らせ、食らいついてきた蛇の口腔には火球を放った。さらに、地面から湧き出た蛇も炎を吐いて燃やす。
先ほどはセレン一体だったため、捌ききれずに遅れを取っていたが、今は特等位が二体もいる。基主を狙っても、二体が代わる代わる上手く有栖の防御に回るため、なかなか隙を突けない。
力の差は歴然としていた。
「こんなことが、あってたまるか……!」
劣等感が刺激される。
嫉妬が、悲痛が、怒りがこみ上げてきた。
「俺はただ、基獣が要らなかっただけだ……。俺には、そんなものがいなくても、何だって出来たんだ。俺は、基獣がいる奴より優れていたはずだ……!」
無数の嘲笑が聞こえる。侮蔑の視線が突き刺さる。
基獣がいないだけで、彼らは男を遠ざけ、出来損ないだと罵った。
「くそっ! お前らさえ、いなければ!!」
死に物狂いで入った研究所でも、表向きは基獣がいなくとも優秀だと言われたとしても、裏では「基獣がいれば、もっとやれることがあっただろうにな」と何故か同情されていた。
「白銀!」
より一層、高く跳んで大蛇の頭上に着地した白銀が、再度、蹄から響命力の塊を叩きつける。
苦しそうに悲鳴を上げた大蛇は、頭を振って白銀を落とすと、食らいつこうと牙を剥く。着地したばかりの白銀は背を向けたままだ。
だが、有栖の視界から大蛇の動きを見た白銀は素早く蛇を避け、首もとを角で突いた。
激痛に悲鳴を上げた大蛇の体が、端からボロボロと崩れ落ちていく。
「お、れの……結晶が……がっ!?」
愕然とする男を、緋月が足で掴んで地面に押さえつける。
庵とセレン、透真と小太郎が男の力を削っていたからこそ、収束が早かったのは間違いない。いくら基獣が二匹いるとはいえ、戦いはまだまだ不慣れなのだ。
有栖は、彼らに礼を言わなければ、と思いつつ、まずは目の前の基獣に言った。
「ありがとう、二人とも」
「ピィッ」
「……っ!」
男の頭上で嬉しそうに鳴いた緋月。
その姿にさえ、男は腸が煮えくり返る思いだった。
「……基獣は、この世界に必要か?」
「え?」
「基獣なんてものが生まれたから、人間の中に『等級』という差別が出来た。だが――」
目に見えて分かる順位は、人の心理に大きく影響する。上位であればあるほど、周りの人間はその者が優れているのだと認識し、逆に、自分より低い者であれば劣っているのだと認識するのだ。
しかし、上位者であったとしても、やはり心の内は他の人間と変わりない。現に、治安部隊の隊長ですら、欠片を利用すればあっさりと堕ちた。
「どんなに高い等級の基獣でも、基主の感情が負に染まればただの化け物だ! そんなものを飼うくらいなら、基獣など不要だろう? いなければ、人間ももっと平等に生きられる!」
上位であれば大丈夫、という根拠はどこにもない。むしろ、恐れられて遠ざけられて当然だ。
ただし、それでは人間の間にある差別はなくならない。ならば、基獣がいなければすべて解決するのではないのか?
「だからこそ、龍樹を切らなければならない。すべての元凶である、あの樹を!」
「…………」
男の言い分は理解できる。有栖も先日まで基獣がいなかった身だ。
だが、受け入れることはできなかった。
そこへ、事態の収束を知った庵達が戻ってきた。珠妃も無事、恭夜が押さえたようで、今は治安部隊の隊員によって拘束されている。当の恭夜の姿は見えないが、手当てを受けているのかもしれない。
「雪ちゃん。彼の言葉に耳を貸す必要はない」
「いえ。この人の言うことにも、一理あるかもしれません」
「え?」
「もちろん、基獣がいらないわけじゃありませんが……」
有栖の答えに、庵は目を瞬かせた。庵達からすれば、基獣はなくてはならないものであり、等級についても、組織を動かす際には統率が取れやすいので必要だからだ。
有栖は言葉を探しながら、どう言うべきか頭の中でまとめる。
「どうして、基獣が生まれたのか、理由は分かりません。けど、基獣がいるからこそ、私達は自分を見つめ直すことができるんです。辛い時だって、一人じゃないって勇気を貰えるんです」
自身の心が具現化したものだからこそ、感情は自分とほぼ同じであり、客観的に見ることができるのだ。それは、時に無茶をしそうなときに足を止めるきっかけにもなり、不安なときの支えにもなる。
最も、これも基獣がいればこその話だが。
「基獣がいる奴に、いない奴の気持ちが分かるか」
「分かります。私も、具現化は無理だって言われてきたので」
吐き捨てるように言った男に、有栖は少し口調を強めた。前の自分に似ている、と思ったからだ。
以前の有栖も、基獣の具現化はもうできないと言われていた。自分でもそう思っていた。
「でも、他人に言われて、そこで諦めてませんか? ……確かに、私の場合は、小さい頃に具現化に近いものをしていたので、可能性はゼロではなかったんだと思います。けど、ゼロだと思い込んで、諦めていませんか?」
心を具現化するならば、無理だと諦めた時点で形にできるはずもない。
男は言い返す言葉が見つからないせいか、眉間に皺を寄せて視線を落とした。
落ちついている今、拘束をしてしまったほうがいい。
そう判断した庵が、近くの治安部隊の隊員に視線を送ったときだった。
「――……だ」
「え?」
「っ、逃げて!」
男が何かを呟いた。
有栖には上手く聞こえなかったが、何かに気づいた珠妃が慌てて声を上げる。
何故、と珠妃を見た瞬間、緋月が押さえていた男の体が黒い靄に包まれた。
「もう、手遅れだ……!」
「いっ……!」
「うわぁっ!?」
靄から黒く淀んだガラス片のような物が無数に飛び出し、有栖や基獣、周囲にいた治安部隊の隊員を切りつける。
敷地外で指示を出していた万里が駆けつけるが、飛び交う黒い欠片を前に上手く近づくことができない。
「全員、下がれ!」
「ちっ。いくら斬ったってキリがねぇ……!」
凪が万里に刺さりそうな欠片を斬り落とし、別方向から迫ってきた欠片を振り返りざまに斬る。
黒い欠片は男の体から次々と生まれているため、いつになっても終わりが見えない。さらに、欠片が小さいせいで斬るのも一苦労だ。
男から離れた緋月や小太郎が炎で燃やしているが、それもいつまでも保たないだろう。
庵は、同じ組織の人間である珠妃へと視線を向けた。彼女をここに連れてきたのは、男を止めるきっかけになればと思ったからだ。
「珠妃先輩。これは何なんですか?」
何が起ころうとしているのか、彼女は知っている様子だった。ならば、対処法も知っているかもしれない。
まずは、どうして男から欠片が飛び出しているかだ。
拘束されたままの珠妃は、言うべきか迷って下唇を噛む。しかし、このままでは男も危ない。
「……あの人は、大量の欠片を取り込んでいるの」
「欠片を!?」
「そう。あの欠片は、元は響命力が強い人間から採取したものだから、取り込むことで、自分も基獣に近いものを使えるようになったの」
彼は、自分が取り込んだ欠片と同じものを怨獣に埋め込んでいた。結果、基獣がいない男でも怨獣を操れた。また、怨獣が消えても尚、男が動けているのも合点がいく。欠片を複数取り込んでいれば、一個なくなったところで他の欠片が補填するからだ。
「けど、欠片はその一つ一つに強い感情が籠もっているから、彼女に言われて、いろんな感情が一気に爆発したんだと思う。だから……もう、解放しなきゃいけない」
珠妃を拘束していた縄が切れた。肩に上がった木葉が噛み切ったようだ。
一瞬、珠妃が男に加勢するのかと身構えた庵だったが、彼女は視線を男に向けたまま言う。
「私の基獣、相手の記憶を削れるの」
珠妃は何をしようとしているのか。
パンドラの箱の一員として、まだ抵抗するのか。
息を飲んだ庵を見て、珠妃は困ったように微笑んだ。
「大丈夫よ。……こうなった以上、私が動くのは――」
「……は?」
珠妃の言葉は、敷地の入り口の方から聞こえてきた狼の遠吠えによってかき消された。ただし、珠妃に近かった庵には聞こえていたが。
木葉は男に向かって高く跳躍し、欠片が体を切りつけるのも構わずに黒い靄に飛び込んだ。
靄の中で、木葉が男に齧り付いた。欠片の発生の感覚が緩まり、靄が徐々に薄れていく。
「やれ、昴!」
誰よりも早く、欠片の間を縫って男に接近したのは、雷を纏った純白の狼だ。傷一つ負うことなく、靄ごと男に食らいつく。同時に、眩いほどの雷が昴の体から迸り、言葉にならない絶叫が周囲に響き渡った。
黒い靄が晴れ、昴に肩を噛まれた男の姿が露わになる。
昴は男から離れると、恭夜の前に戻って様子を窺う。
だが、地面に横たわったままの男に動く気配はなく、完全に意識を飛ばしているようだった。
「昴。よくやった」
「ワンッ」
「確保」
この機会を見過ごすわけにはいかない。
万里の一声で、治安部隊の隊員が一斉に動き、手早く男を拘束していく。また、縄を切った珠妃も。
事態が収束したところで、恭夜は深く息を吐いてその場に座り込んだ。慌てた有栖が駆け寄る。
「恭夜!」
「……ははっ。この浄化っての、すっごい疲れるな」
「なんで、昴ちゃんが……?」
恭夜の傍らで主人同様に座った昴は、近づいてきた有栖に尻尾を振った。嬉々とした表情は顔立ちこそ凛々しくなっているが、以前の昴の面影も微かに残る。
浄化については、通常は特等位しか行えないはずだ。昴は第三位であり、どう足掻いても浄化はできない。
だが、今の昴は姿はもちろん、纏う響命力も変わっている。
「一体、何があって……」
「俺にもよく分かってないけど、でも、有栖のことを守らないとって思ったら、自然と力が湧いてきたんだ」
「へぇ。それじゃあ、等級が上がったってことか?」
「後から変わるなんて聞いたことが……昴?」
興味深そうに訊ねる透真だが、一度定まった等級が変わることはないはず。有栖のように基獣を具現化していなかったならばまだしも、昴はずっと前に具現化されてから等級は変わっていないのだ。
基主である恭夜ですら状況に困惑していたが、昴がまた光に包まれたことで言葉が止まった。
ただし、その光もすぐに収まり、再び姿を現した昴は元の犬の姿に戻っていた。
「「「え」」」
「わふっ!?」
響命力も普段に戻っている。
驚きで固まる三人と一匹を眺めていた万里は、類を見ない現象を前に小さく肩を竦めた。
「これは、いろいろと見直しが必要になってくるな」
「そうですね。彼女の件で、今は基獣がいない人達にもチャンスはあると分かった。そして――」
恭夜は固まっているが、不思議そうに自身の体を見る昴の様子からも、困惑しているのが分かった。
庵は、パンドラの箱のリーダーが連行されていくのを横目に、この国に根付いた制度を変えるときがきたか、と小さく笑みを浮かべた。
「等級は、想いの強さによって変動するものであると、彼が証明してくれた」
特等位だからといって、必ず優れているものではないということも。
組織の統率者は捕らえられたものの、また別の問題が起こってしまった。目撃者も多いため、すぐにでもマスコミが騒ぎ立てることだろう。
万里は頭痛を感じてこめかみを押さえた。
「はぁ……。忙しくなるな」
「望むところです」
「俺は嫌でーす」
「拒否権はない」
「鬼だ……」
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