繰り返す範囲は「時間」で区切ろう! ――「超ズボラ勉強法」の極意・その3の4
夏子に言われた通りのやり方で、俺は例題を参考にしつつ問題を解いていく。解けなかった問題は解答をノートに書き写し、やり方を覚えていく。おっと、バツをつけるの忘れないようにしないとな。
でも、このやり方だと結構順調に進むな。おかげで次の内容に入ったぜ。さっきと同じように例題を終え、問題を解いていく。
と、3問目に入った途端にいきなりタイマーが鳴った。
「うおっ!?」
「あ、時間だね」
「ちょ、ちょっと待て! まだ始めたばかりだぞ!?」
慌てる俺に、夏子は言った。
「あ、これは問題のタイマーじゃなくて、1セットを区切るためのタイマーだよ」
「1セット?」
「そう。繰り返す範囲を区切るためのね。1セット15分に設定してたんだ」
「おいおい、ちょっと待てよ」
俺は思わず夏子に聞いた。
「繰り返すって、まだ始めて15分なんだろ? そんなすぐに繰り返しても前の問題覚えてるから意味ないだろ」
夏子が不思議そうな顔をする。
「どうして? 解き方を覚えてるうちにやらないと意味ないでしょ? すっかり忘れてから繰り返しても、1からやり直しで前やったことがまるまる無駄になっちゃうよ?」
「うん? あれ、確かにそうかも」
「それに安心して。秀ちゃんが思ってるほど、さっきやった内容って覚えてるものじゃないから」
「ほっとけ! どーせ俺はバカだよ!」
「あ、ごめん、そうじゃなくて、みんなそうだって話。私もそうだしね」
「はあ? お前が? そんなわけねえだろ、お前いつも暗記モノ満点じゃん」
「それとこれとは話が別だよ。その話は置いといて、秀ちゃんが解き方を覚えているんならそれはとてもいいことなの。だから、覚えてるうちに記憶を固めておく必要があるんだ。鉄は熱いうちに打てって言うでしょ?」
「ふむ……」
こいつが言うと、何となく説得力ある気がするなあ。
「もちろん、ただ答えの数字を覚えてるだけってのは全然意味がないんだけどね。あくまで解き方を覚えるんだよ? それに、さっきは例題を見ながらだったしね。わからなかった問題も答えを書き写しただけだし、これからが本番だよ?」
「ああ、そっか」
すぐに繰り返す理由については何となくわかった。まあ、こいつがこう言ってるわけだしな。多分効き目もあるんだろ。
でも、もう1つよくわからんことがある。
「なあ、でもなんで15分で区切るんだ? この問題集、見開きで1つのテーマになってるんだし、ページの最後までやった方がキリがよくないか?」
「うん、この問題集の場合はそれでも構わないね。15分っていうのはあくまで目安だから」
笑顔を見せながら、夏子が続ける。
「時間で区切っているのはね、1セットのばらつきを減らすためなんだ。ちょっとこの問題集見てくれる?」
夏子がカバンから取り出したのは、1冊の問題集だった。無造作にページを開いて俺に見せてくる。げ、明らかに難しそうな問題ばっかり……。
「こういう問題集だと、単元ごとのボリュームがばらばらで、内容で区切ろうとすると結構面倒なんだよね。極端な話、問題1問ごとのサイズも全然違うし。だから、時間でばっさり区切っていった方がやりやすいんだ」
「へー」
問題集をよく見ると、どの問題にもマルバツのチェックが入ってる。てか、全部マルだな……。それだけじゃなく、マルの下に時間まで書きこんであるし。
気になるのは、ページの途中に書きこんである横線だな。問題と問題の間をぶった切るように線が引いてある。
「なあ、この横線は?」
「あ、それが時間で区切ったところだよ。私は30分で区切ってるけどね。そんな感じで、問題の区切りをはっきりさせておくんだ」
「なるほどな」
うなずくと、俺は問題集を夏子に返す。なんか見てるだけで頭が痛くなりそうな問題ばっかだったからな。
「その問題集を解く時も、基本は15分で設定してね。別に何分でもいいんだけど、しっかり時間を設定しておくことで、ここまで勉強するっていう目標がはっきりするし、2回目以降の繰り返しも効果的になるから」
「ああ、わかった」
「あと、その問題集の場合はタイマーが鳴った時に問題が残り少なければ全部片づけてもいいし、逆に始めた途端にタイマーが鳴ったなら次の回に回しちゃってもいいよ。もちろん、私みたいにその問題のところで線を引いて区切ってもいいしね。そのあたりは秀ちゃんがやりやすいようにやってみて」
「おう。じゃあこのページはあと1問だし、全部終わらせることにするよ」
「うん、よろしく」
夏子はおどけた調子で敬礼してみせると、タイマーをセットする。俺も残りの問題を片づけることにした。
今回は上の例でほぼ言いたいことをほとんど言ってしまいました(笑)。ですので、まずは上のやり取りを熟読していただき、次回もう少し詳しく説明と補足を加えたいと思います。どうぞお楽しみに。
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