1回目は遠慮せず例題や解答を見ながら進めよう! ――「超ズボラ勉強法」の極意・その3の3
夏子に言われた通り、俺は左ページの例題を参考にしながら右ページの問題を解いていく。
とりあえず最初は夏子が時間をはかってくれているので、俺は問題を解いては手をあげて、夏子に採点してもらっている。よし、これも正解だな。上の方にマル、と。
あれだな、例題の解き方を見ながらなら、さすがに俺でも解けるな。てか、ホントにこんなカンペ見るようなやり方でいいのかな。
そんな調子で意外にも快調に問題を解き進めていた俺だったが、5つ目の問題でその手が止まった。
あれ? これ、後ろの項にも文字がついてるぞ? こういう時ってどうするんだ? 例題の問題は全部後ろの項が数字なんだけど……。
「秀ちゃん、そこわからない?」
「い、いや、わかる! 大丈夫だから!」
夏子の問いに、俺は慌ててそう答える。これが解けなかったらまた前に戻ることになるんだ、ヤダよ俺!
「あと30秒」
「ま、待って! 今解くから!」
かつてないほど真剣に問題と睨めっこする俺に、夏子が容赦なく残り時間を告げてくる。ヤ、ヤバい! マジでわかんねえ!
軽くパニックを起こす俺に、夏子が無情にも時間切れを宣告した。
「はい、そこまで」
「待ってくれ! あと1分、いや30秒!」
必死に食い下がる俺に、夏子が首をかしげる。
「どうしたの? そんなに必死になって」
「だ、だって、これができなかったら、また前に戻るんだろ?」
俺の言葉に、夏子はああ、なるほど、といった顔をする。
「それは様子を見て判断するよ。とりあえず時間切れだから、この解答を見て」
そう言いながら、夏子が問題の解答を見せてきた。
「あー! 9b2乗ってのは、3bを2回かけたものってことか!」
「そうそう。ちゃんとわかってるね、秀ちゃん」
「うわー! そうだとわかっていれば、こんな問題間違わないのにー!」
思わず自分の頭をかきむしる。
「俺、戻らなきゃダメ?」
「ううん、解答を見て仕組みが理解できてるから大丈夫だよ」
「マジか!」
おお、よかったぜ! さすがにこれ以上は戻りたくなかったからな!
「じゃあ秀ちゃん、間違ったところは解答をノートにそのまま書き写してくれる?」
「うん? 今読んで理解したからいいんじゃないのか?」
「だーめ。人間って意外と理解したつもりでも記憶に残ってない生き物だから。しっかり書き写して、きちんと記憶に刻みこむの」
「へーい」
こいつ、厳しいなあ。どうせ俺はお前みたいにもの覚えよくないですよーだ。
心の中でそう毒づきながらも、俺は言われた通りに解答を書き写していった。
さて、それではまずは繰り返しの1回目、最初に問題を解く時はどのように取り組むかについて説明していきます。
1回目についてですが、これは問題を解くというよりも、問題の解法を確認する、様々な問題のバリエーションを眺めて親しむ、というくらいに割り切って進めていくのがベストです。
上の例にもある通り、1回目は例題を参考にしながら進めてもらって構いません。もちろん例題を見ないで解いてもいいのですが、解き方がうろ覚えの状態で考えこんでも時間がもったいないですので、記憶があやしいなと思ったらすぐに例題を参照してください。
また、わからない問題にぶつかった場合はタイマーが切れるのを待つことなくギブアップしてもらって構いません。ただしその場合でもすぐに解答に移るのではなく、最低でも30秒は考えてどこが自分はわからないのかを考えてみてください。
わからない問題、解けなかった問題、時間切れになった問題など、バツがついた問題については1問1問その場ですぐに解答を開いて、それをノートにそのまま書き写していきましょう。書き写す際は途中式や単語などに注目して、どうしてそのような答えになるのかを意識しながら書き写していってください。
何も考えずに単に書き写すだけでは無意味な文字の羅列を書き写すのと変わりませんので、わかる部分だけでいいですからなぜそうなるのかを考えながら書き写してください。
なお、わかる部分がまったくない場合、その問題は現時点でのあなたの能力を超えている、必要な道具が足りていないということですので、極意その1にしたがい前の単元に戻ってください。
左に説明、右に問題のタイプや、チャート式のように例題と解答というタイプの問題集を利用する場合は、1回目ははじめから解答を見ながらそれをノートに書き写していってください。
それが終わったら説明の部分に目を通し、2回目からが本番というつもりで臨んでもらえば大丈夫です。
例題を見ながら問題を解いたり、解答の丸写しなどをして本当に理解につながるのか、とお考えの人もいるかもしれませんが、まったく問題ありません。
むしろ、あいまいな記憶であやふやに問題に取り組む方が妙な記憶違いをしたりする危険があると言えます。当然ながら、そのようなあやふやな状態では時間も無駄にかかってしまいます。
また、先ほども説明した通り、1回目は問題の解法を確認したり様々な問題に親しむことが目的です。何も見ないで解答するというのは、2回目以降にやればいいことなのです。
繰り返しますが、1回目の学習というのは解法の確認や具体的な作業の仕方、出題のされ方の確認くらいに割り切って進めていくべきです。はじめて目にする問題が解けないのはむしろ当たり前のことです。そこでうんうんと悩み過ぎず、手を止めないでどんどん進めていくことが大事なのです。
逆に、1回目にあまり気合を入れすぎると、なかなかうまく進められずにだんだん嫌になり、肝心の2回目以降の繰り返しを行うことなく問題が放置されるという最悪の結果になりかねません。というより、ほとんどの人はそんな感じなのではないでしょうか。
今回説明した方法は、今までの皆さんの勉強のやり方とは大きく異なるやり方だったかもしれませんね。ですが、このくらい割り切って1回目の勉強を進めることによって、負担も少なくスムーズに2回目以降の繰り返しへと移行することが可能になるのです。
次回は、繰り返しの1セットをどのくらいの量に設定すればいいかという話です。どうぞお楽しみに。
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