きちんと正誤の記録を書きこもう! ――「超ズボラ勉強法」の極意・その3の2





 例題を解き、説明も確認し終えた俺は、いよいよ問題に取りかかろうとする。

 と、夏子が「ちょっと待って」と俺を制止すると、カバンから1冊のノートを取り出した。


「これに問題解いていってくれるかな」

「げっ!」


 思わず俺はうめき声をあげた。


「まさか、ノートの書き方もいろいろあったりしないだろうな……」

「ううん、普通に問題を解いてくれればそれでいいよ」

「え、マジで?」


 てっきりこまごまと指示されるもんだと思ってた俺は、夏子の言葉が信じられず、思わず聞き返す。


「うん。だって、細かい話をしても秀ちゃん続かないでしょ?」

「ま、まあ、確かに……」

「しいて言えば、スペースをしっかり取ることと、計算をぐちゃぐちゃ書かないことくらいかな。そこはちゃんとやってね?」

「お、おう」


 うなずくと、夏子は問題が書いてあるページの上の方を指さした。


「それじゃ、まずはこのあたりに今日の日付を書いておいて。あ、例題のページにも書いておこっか」

「おう」

「じゃあさっそく問題を解いてみよっか。最初だから、1問ずつ答え合わせしていくね」

「わかった」

「そうそう、さっきも言ったけど、1回目は左の例題を見ながらやっていいからね」

「ホントに例題見ながらでいいんだな?」

「うん。むしろしっかり例題をマネして、きちんと身につけるつもりでやってみて」

「おう、了解だ」

「時間は1分ね。よーい……始め!」


 夏子の合図と共に、俺は問題を睨みつける。これができなかったら前に戻らされるからな。気合入れていくぜ。

 ふむふむ、なんだ、例題と同じやり方だな。これならすぐできるぜ!


「できた!」

「おー、すごいよ秀ちゃん! 23秒!」

「おっしゃ!」


 思わずガッツポーズをする。なんか23秒って聞くとすごい速く解けたみたいでちょっと嬉しいな。


「答えもちゃんと合ってるよ。それじゃ秀ちゃん、問題の上のところにマルを1つつけておいて」

「マル?」

「うん。ちゃんとこの問題が解けましたってわかるように書きこむんだよ」

「へえ、まあ別にマルつけくらいなら大した手間でも……」

「ちょっと待って秀ちゃん!」

「うわっ!」


 問題にでっかくマルをつけようとした俺の手首を、夏子はガシッとつかんで止めた。


「ビックリさせんなよ! なんだよ急に!」

「えっとね、マルは問題の上の方に、小さめに書いてほしいんだ」

「え? 解けたからマルつけるんじゃねーの?」

「ううん、これは1回目がマルだったって意味のマル。だから、問題の上のあたりに小さめに書いて、2回目と3回目もその隣にマルバツを書いていくの」

「ああ、そういうことか」


 確かにでっかくマル書いたら、それが何回目のマルかわかんなくなるもんな。てか、2回目と3回目のマルも書くのね。

 夏子の言ってることがわかった俺は、問題の上にちょこんとマルをつける。


「これでいいか?」

「うん、ばっちり。それじゃ次の問題にいこっか」

「おう、どんどんきやがれ!」


 俺は再び問題集と睨み合いながら、夏子の合図を待った。






 例題で基本事項を確認したら、次は問題を解いていきましょう。細かい取り組み方は次回に譲るとして、ここでは問題を解いた時の作業について説明していきます。


 まず、上の例にもある通り、問題のページにその日の日付を書きこみましょう。問題を解くにあたっては、解答や計算などを書きこむノートを用意します。ここで科目別にノートをきちんと準備すると便利ではあるのですが、それをやろうとすると挫折する人が続出するので「超ズボラ勉強法」では取り上げません。

 とりあえずはきちんとスペースを取り、計算などがぐちゃぐちゃにならないことにだけ気をつけてそのノートに問題を解いていってください。


 それらの準備を終えたらタイマーで時間をはかりながら問題を解き、解き終えたら解答を見ながら問題の正誤をチェックします。

 そして解答を終えたら、その結果を問題集に直接、必ず解いた問題の近くにマルかバツでチェックします。

 これは、言うまでもなくその問題の正誤を記録しておくためのものです。こうして記録を残しておくことのメリットは大きく2つあります。


 1つはその問題がどの程度できているかの目安としての機能です。バツが多いようであればその問題は苦手ということですので、特に試験の直前期などはまずバツの多い問題を優先的に学習する、などというような使い方が可能になります。


 そしてもう1つのメリットは、その問題を何回解いたのかが一目瞭然であるということです。

 これが何より重要なことでして、きちんと記録を残すことにより、その問題を何回解いたのか、繰り返しに漏れがないか、そもそも解いたことがある問題なのか、というようなことを確認できるようになるわけですね。

 記録さえきっちりと残しておけば、「この問題、前に解いたことがある気がするんだけど、どうだったっけ……」というようなことも起こりません。


 マルとバツの基準もはっきりと決めておきます。原則として、時間内に問題が解ければマル、それ以外はすべてバツをつけましょう。途中までは解けた、最後に計算ミスや書き間違いをした、制限時間を少し過ぎた、これらはすべて一律でバツとして扱います。

 これはルールを単純化することでマルかバツか迷わなくするためです。少し言い方を変えると、マルかバツかの判断で考えこむのは完全に時間の無駄ですので、そのような無駄を一切排除するためにルールを単純化しているのです。


 なお、もしも可能であれば、チェックしたマルバツのそばに解答時間も記録しておくと、復習時の効果・効率が大幅にアップします。つまり、2度目は前より速く解こうとか、マルはついているけど時間がかかっているから少し練習しておこう、などといった、より緻密な学習が可能になるわけです。

 ただし少しだけ手間がかかりますので、まずはマルバツだけでいいですからしっかりとつけていってもらいたいと思います。


 次回は最低3回の繰り返し学習のうち、1回目の勉強の仕方について説明していきます。どうぞお楽しみに。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る