まず例題を解こう! ――「超ズボラ勉強法」の極意・その3の1
「さて、それじゃ始めよっか」
「あ、ああ」
緊張する俺に、夏子は左側ページの例題を指さした。
「じゃあ、まずはそこの例題をやってみて」
「え? 上になんか説明あるけどいいのか?」
「うん、まず例題からでいいよ。穴埋め式だから読めばできそうでしょ?」
「まあ、確かに」
さっそく取りかかろうとする俺を、夏子が止めに入る。
「あ、ごめん、ちょっと待って」
「なんだよ」
「穴埋めは赤ペンか赤のボールペンで書きこんでくれる? はい、これ」
そう言って夏子が赤ペンを渡してくる。
「ったく、わかったよ」
「それじゃ始めるね。時間は1分だよ」
「ちょっと待て! 例題も時間はかるのか!?」
「もちろんだよ。例題だって問題だし。それじゃいくよ、よーい、始め」
「わ、わわっ!?」
容赦なく夏子がスマホのタイマーをスタートする。俺は慌てて例題に目を向けた。
ふむふむ、この流れに沿って穴を埋めていけばいいんだな。
なるほど、ここが5の2倍でこっちが5の2乗だから、ここには5を入れればいいのか。説明わかりやすいな。
これならさすがに俺でもわかるぞ。なんだかゲームのチュートリアルみたいだな。
無事に全部穴を埋めた俺は、夏子に声をかけた。
「できたぞ」
「おー、秀ちゃん、できるじゃない。まだ20秒残ってるよ」
「まあ、俺が本気出せばざっとこんなもんよ」
ひとしきり胸を張ってみせてから、俺は夏子に質問する。
「ところで、なんで赤ペンで穴埋めさせたんだ?」
「ああ、それはね、こういうこと」
夏子はカバンをゴソゴソすると、赤い下敷きを取り出した。
それを、例題のページの上に乗せる。
「こうすれば、答えが消えるでしょ?」
「おお!」
確かに、赤ペンで書いた部分が見えなくなってるぜ! こいつ頭いいな!
俺が感心してる横で、夏子が答えをチェックする。
「うんうん、全部合ってるね。秀ちゃん、例題は大丈夫だった?」
「ああ、これだけていねいに説明されたらさすがにできるよ」
「よかった。それじゃ、最初の説明にも目を通してね」
「おう」
「時間は1分でいいかな」
「これも時間はかるのかよ!」
ツッコミを気にする様子もなく、夏子がタイマーをスタートする。こいつ、ホント容赦ないな!
あ、でも今やった例題の説明だから、読めばすぐわかるな。例題やった後の方が確かに説明もわかりやすいかも。
いよいよ「超ズボラ勉強法」も、3つ目の極意に突入します。この3つ目の極意こそが、「超ズボラ勉強法」における具体的な勉強方法にあたるパートですので、皆さんもしっかりと身につけてくださいね。
さて、問題集をどのように進めていくかということなのですが、まずは例題から始めましょう。単元や例題の前にいろいろと説明が書いてあることも多いですが、そちらよりもまず例題をやってみるのです。
左に例題、右に問題のタイプの問題集であれば、例題は穴埋め式になっていることが多いですので、その誘導にしたがって穴を埋めていきましょう。わからなければ解答を見ながら書きこんでしまって構いません。
この際、空欄は赤のペンやボールペンで埋めるようにしましょう。そうすると、次回以降赤い下敷きやシートで答えだけを隠すことができます。復習時はシートで隠して確認していけばいいのです。
書きこんだ答えが間違っていることも多いので、こすると消えるフリクションタイプのボールペンなどを用いるといいでしょう。
例題を解く際には、準備したタイマーをセットしましょう。基本的には1問1分で十分です。これはついだらだらと時間をかけてしまうことを防ぐための作業です。
もし時間内に終わらなかった場合はもう一度セットして続きを解いてください。
なお、左に説明、右に問題のタイプや、チャート式のように例題と解答というタイプの問題集については、極意3の3の内容を参考に問題を解いていってください。この場合も、まず一度問題を解いてから説明に目を通す流れになります。
例題を解き終えたら、その例題に対応する説明に目を通しておきましょう。これもタイマーをセットし、だらだらと時間をかけないようにしておきます。
以前もお話しましたが、私は最初に説明を熟読するよりも、まず例題に手をつけてから説明に目を通す方が理解はスムーズになると考えています。
たとえば循環小数について学習しようとした時に、最初に循環小数とはかくかくしかじか、といったような説明を読んでいくよりも、まず3分の1や7分の1を小数点第8位くらいまで計算して、作業を通じて数字がループしていることを確認してから説明に目を通した方が理解が確実かつ早い傾向にあります。塾で指導したりしていると、その違いは顕著です。
一度問題を解くという作業の過程を経ることで、抽象的な説明が直感的に理解・把握しやすい状態になるのですね。
このような形で例題と説明をチェックしたら、次はいよいよ問題に取り組むことになります。「超ズボラ勉強法」の核心部分に入っていきますので、どうぞお楽しみに。
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