時間を意識しよう! ――「超ズボラ勉強法」の極意・その2の1




 夏子が開いたページとにらめっこしながら、俺は気合を入れる。ここがわからなかったら、さらに前に戻ることになるからな。絶対に負けられねえ。


「そうだ、秀ちゃん」

「うわ、なんだよ急に!」


 集中してたところに声をかけられ、俺は思わずイスごと倒れそうになる。


 そんな俺の様子には構わず、夏子が続ける。


「ストップウォッチとかタイマーは持ってる?」

「え? いや、ここにはないけど?」

「じゃあ、準備してくれる?」

「いや、急にそんなこと言われても」


 困惑する俺に、夏子は自分のスマホを取り出して俺に突きつけた。


「じゃあスマホでいいよ。秀ちゃんのにも時計アプリがあるでしょ?」

「ああ、それならあるかも」


 俺もスマホを取り出すと、時計アプリを探す。……お、あったあった。


「これでいいのか?」

「うん。その中に多分タイマーもストップウォッチもあるはずだよ」

「どれどれ……あ、ホントだ。便利なもんだな」

「本当だね」

「でも、なんでこんなもん用意しなきゃいけないんだ?」

「え?」


 俺の疑問に、夏子が心底不思議そうな顔をする。


「なんでって、時間がわからないと何もできないじゃない」

「時計があればよくね?」

「ダメだよ、ちゃんと時間を把握しないと」


 そう言うと、夏子は自分のスマホのタイマーを指さした。


「これからは、1つ1つの作業をきっちり時間管理していくからね」

「う、うへえ……」


 にっこりと笑う夏子に、俺は思わずうめき声をもらした。






 さて、今回から「超ズボラ勉強法」の2つ目の極意、「学習中の無駄な時間を極力省く」の内容に入っていきたいと思います。


 まずはその1つ目として、時間を意識することの重要性を確認していきましょう。

 皆さんもよく「1日何時間勉強しろ」と言われたり、「遊ぶ時間があるなら勉強しろ」などと叱られたりすることがあったりすると思います。ですが、逆に言えば、勉強するにあたって意識する時間というのはせいぜい「今日はどれだけ勉強した」くらいのものなのではないでしょうか。

 それはそれで結構なのですが、「超ズボラ勉強法」では、さらに細部に渡って時間を意識することになります。具体的な方法は極意その3で詳しく説明していきますが、まずはその準備として、皆さんにはタイマーまたはストップウォッチを準備していただきます。

 タイマーはあなたの学習効率を劇的に上げる秘密道具、いえ、神器です。手元にないのであれば、今すぐ店に2つ買いに行ってください。百円均一の店で買えますので。

 もっとも、今はスマホの中に最初からアプリとして入っていることが多いので、そちらで準備してもらえればOKです。入っていなければ適当にダウンロードしましょう。


 余談になりますが、一部の教育関係者の間では幻の名著として知られている有賀ゆう氏の『スーパーエリートの受験術』という本があります。今は絶版になっていますが、ネット上では今でも数万円で取引されている、まさに幻の本です。ちなみに国会図書館にもあるそうですが、閲覧した知人によれば、あまりに多くの人が閲覧したためにもはやページがバラバラになり、糸か何かでつなぎ合わせている状態なのだそうです。

 私は同著者が書いたもう1冊の本を読んだことがありますが(こちらもネット上では数千円で取引されています)、その中にも「とにかく今すぐストップウォッチを買え」というくだりがあるんですね。有賀氏はなかなか個性的な方で、その本の中では「ストップウォッチを買う手間やお金すら惜しむような人が勉強ができるようになるなどと思うな」くらいの勢いで、ストップウォッチを買うことを強くすすめていたりします。

 彼の本の内容は普通の人が実行するには難しいものも多いのですが、タイマー・ストップウォッチの活用は誰にでもできることですので、必ず準備しましょう。


 さて、準備したタイマー(またはストップウォッチ)をどのように使っていくかについてですが、基本的には問題を解く時に使いつつ、複数タイマーがある場合は学習範囲を時間で区切る目的で使用します。ですので、皆さんはとりあえずタイマーを2つ用意してください。

 次回以降、タイマーの具体的な使い方について説明していきます。どうぞお楽しみに。








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