第6話 そのとき御使いは自ら名を明かす (後)

 エレミヤより少し後の時代に活躍したダニエルは、数々の幻を見る。六章までは王宮での出来事で、七章以降は天使による黙示である。


 七章では、四匹の獣の幻を見る。天使に獣は四人の王のことだと解説される。第四の獣は地上に興る第四の国で、十本の角は十人の王だと説明された。ダニエルが第四の獣を見ていると、十本の角とは別にもう一本角が生えてきて、前の三本が抜けた。第四の獣は殺され、雲に乗った人の子が現れ、諸民族は彼に仕える。


 八章では、ウライ川のほとりにて、角が二本の雄羊と、角が一本の雄山羊の幻を見る。雄山羊は雄羊を倒し、尊大になり、四本の角が生えてくる。そのとき「ガブリエル、説明せよ」という声がして、ガブリエルらしき人物が、これは世の終わりに関わることだと告げた。

 二本の角のある羊はペルシャとメディアの王で、山羊のほうはギリシャの王である。四本の角は、ギリシャから興る四つの国を示している。四つの国の終わりに、猛悪な王が起こり、破壊を行う。


 九章では、ガブリエルがメシアによる救済の時期を告げる。予定の時期はエルサレム再建命令から七十週後。週と訳されているが、ヘブライ語の七をそう訳したもので、七十週の本来の意味は七十×七年とされるので490年。エルサレム城壁修築はネヘミヤ帰還後のBC445年なので、罪が終わるのはAD45年となる。


 十章。ある天使がペルシャの君と二十一日間戦い、大天使ミカエルが助けに来てくれたので、その天使はダニエルのもとに来ることができた。ペルシャの君の次にギリシャの君が現れる予定。ペルシャの実力者と交渉したことを、戦ったように表現したのだろう。ミカエルは天使長のはずなのに、この天使の補佐的な仕事をしているようにとれる。


 十一章では、ペルシャとギリシャの運命を告げる。キュロスの後にもペルシャになお王が四世代栄え、その後ギリシア王国の勇壮な王が大いに支配し、ほしいままに行動する。彼の死後は、王国は天の四方向に分割され、そのうちの北の王と南の王が争う。やがて卑しむべき者が北の王となり、南の王と決戦。これが終わりの時だという。十二章では、その時、ミカエルが大活躍すると記されている。


 ミカエルをリーダーとした天使集団は、今後の世界情勢のシナリオを描き、それを預言者ダニエルにプレゼンテーションした。これまで御使いは主の陰に隠れて、自ら名乗ることはなかった。ミカエル、ガブリエルという名前を明かしたのは、このプランが従来の延長線上にあるものではなく、彼ら自身の手による新たな神の計画だということだ。


 八章では、ガブリエルが説明したということから、幻を描きだしたのはガブリエルで、立案者もガブリエルと思われる。幻に気味の悪い獣が登場するのは、彼の趣味に違いない。もう一人登場した天使は天使長ミカエルだろう。わざわざ天使長が見に来たということは、ダニエルへの啓示は極めて重要ということだ。


 それなのに、ガブリエルは説明しなければわからない幻を使った。残念ながら説明を受けてもわからないほど、ガブリエルが描いた幻は謎めいている。彼のその趣向のせいで、一神教は謎だらけになり、ニュートンやパスカルといった後世の天才たちがその謎に挑むことになる。

 

 七章の四匹の獣は、バビロニア、ペルシャ(メディア)、ギリシャ(マケドニア)、ローマの王のことだ。二名の執政官が毎年交替する共和制ローマだけは、一人の王による発展ではないので獣は国のこととした。十本の角である十人の王はブリタニア、ヒスパニアなど十の地域に思えるが、そのうちの三つが倒された事実はない。計画が失敗したのでなければ、十の権限と解釈したい。


 一般的に共和制ローマでは、元老員、政務官、民会の三者によって国が運営されていたとされる。今日、ローマ帝国と呼ばれるが、皇帝(アウグストゥス)は、権威の呼称にすぎず、共和制の体裁を守ったまま、政務官の主要職を兼任したことで、権力を掌握した。政務官には最高政務官である執政官の他、財務官、法務官、造営官、護民官、監察官、神祇官、鳥占官、ウェスタの巫女などがあり、今日の大臣職を思わせる。


 十本の角とは別に、もう一本生えてきた角こそ皇帝である。三本の角が抜け落ちたのは、執政官、属州総督、護民官という三つの主要な官職の命令権を持ち、権限が皇帝に集中したことを意味しているのかもしれない。


「わたしが見ていると、この角は聖徒と戦って、彼らに勝ったが、ついに日の老いたる者がきて、いと高き者の聖徒のために審判をおこなった。そしてその時がきて、この聖徒たちは国を受けた(ダニ7:21-22)」

「彼の主権は奪われて、永遠に滅び絶やされ(ダニ7:26)」


 皇帝によるキリスト教弾圧とイエスの登場。さらにキリスト教が国教になるだけでなく、皇帝の職位が廃止され、聖職者がローマの実権を握ることを臭わせているようだ。


 ダニエルの時代は、新バビロニアからアケメネス朝ペルシャの初めの頃だった。主の僕ネブカドネザルによって発展した新バビロニアはキュロスのアケメネス朝ペルシャによって滅ぼされ、そのペルシャもギリシャの一地方であるマケドニアのアレキサンダー大王に滅ぼされる。

 大王の死後マケドニアは、アンティゴノス朝マケドニア、セレコウス朝シリア、プトレマイオス朝エジプトの三つに分裂した。分裂当初はより多くの勢力が競いあい、それが三つに集約されたので四カ国の時期もあった。それらは、第四の獣共和制ローマの属州となる。


 アッシリアを新バビロニアが滅ぼし、新バビロニアをペルシャが滅ぼすことは、神の計画だった。


「シオンに住むわが民よ、アッスリヤびとが、エジプトびとがしたように、むちをもってあなたを打ち、つえをあげてあなたをせめても、彼らを恐れてはならない。ただしばらくして、わが憤りはやみ、わが怒りは彼らを滅ぼすからである(イザヤ10:24-25)」

「彼らはつるぎをもってアッスリヤの地を治め、ぬきみのつるぎをもってニムロデの地を治める。アッスリヤびとがわれわれの地に来て、われわれの境を踏み荒すとき、彼らはアッスリヤびとから、われわれを救う(ミカ5:6)」

「見よ、わたしは北の方のすべての種族と、わたしのしもべであるバビロンの王ネブカデレザルを呼び寄せて、この地とその民と、そのまわりの国々を攻め滅ぼさせ、これを忌みきらわれるものとし、人の笑いものとし、永遠のはずかしめとすると、主は言われる(エレ25:9)」

「見よ、わたしはカルデヤびとを興す(ハバクク1:16)」

「主はメデアびとの王たちの心を引き立てられる。主のバビロンに思い図ることは、これを滅ぼすことであり、主があだを返し、その宮のあだを返されるのである(エレ51:11)」

「北の方から一つの国民がきて、これを攻め、その地を荒して、住む人もないようにするからである(エレ50:3)」


 新バビロニアの北は、メディア王国の領土だった。メディア王国はキュロスが滅ぼし、アケメネス朝ペルシャとなる。アッシリア、新バビロニア、ペルシャと覇権が交代していくことがあらかじめ決められていたように思われる。

 

 しかし、エレミヤ書をよく読むと、一章では北の国々がエルサレムの城壁と門に居座るが撃退されるとあり、それが六章では単数の北の国となり、シオンを攻めるが勝敗は不明で、七章ではユダの町とエルサレムは荒れ果てることになり、十三章でユダは捕らえ移されると明かされ、十六章で捕囚の後の帰還が告げられ、二十章になって北の国の正体が新バビロニアだと明かされる。


 エレミヤの啓示が始まった頃は新バビロニアの誕生前なので、具体的にどの国になるのかはっきりしておらず、事態は流動的だったのだろう。新バビロニアを滅ぼしたアケメネス朝ペルシャは、メディアの地に興った新興国だった。エレミヤ書ではメディアの王たちとあるので、メディアのどの勢力が覇権をとるか未定だったに違いない。


 計画は大雑把で流動的だったが、外れてはいない。だが、何故、天使がそのようなことをする必要があるのだ。宗教にあきて政治に興味を持ったのか。

 主はエレミヤにこう語っている。

「ある時には、わたしが民または国を抜く、破る、滅ぼすということがあるが(エレ18:7)」

「またある時には、わたしが民または国を建てる、植えるということがあるが(エレ18:9)」


 イスラエルに王が誕生することを嫌った天使ではあったが、ダビデやソロモンの時代に、王政のメリットに気が付いた。王が改宗しさえすれば、国全体を一気にまとめて改宗させることができる。それなら、できるだけ大きな国を造ればいい。


 そこで天使達は、アッシリアの辺境のバビロニアを勃興させ、アッシリアを滅ぼした。新バビロニアを滅ぼしたアケメネス朝ペルシャは大帝国だ。マケドニアはさらに大きい。そして、天使達の計画通り、究極の世界帝国ローマが誕生した。


 共和制ローマを帝政に変え、皇帝をキリスト教に改宗させ、国教にすることができれば、一気に莫大な数の信者を獲得できる。初代皇帝オクタビアヌスが大神祇官長にも就任し、ローマの宗教をつかさどる権利を獲得したのは、その準備だったのだろう。


 一度にローマのような大帝国を造ることは難しい。大抵の王朝は、三代目君主の頃をピークとし、国力が衰退してゆく。無能な世襲後継者や既得権益層の存在で腐っていく大国を拡大させるよりも、周辺や辺境の一民族を勃興させて、やる気のみなぎる建国の王に新しい国を造らせたほうが、結果的により広い領土を獲得できる。


 小国といえども、大国に戦争に勝てば、その支配地域がそのまま加わる。天使が味方をすれば、小国でも戦争で勝てる。獣は代替わりさせるので、四匹も必要になる。さらに、史実が預言のとおりに推移していけば信憑性が増すので、覇権交替は優れたアイデアだ。


 天使が最初に計画を立てた時点では、オリエントはアッシリアが支配していた。アッシリアの歴史はとても長いが、最盛期は新バビロニアとメディアの連合に大敗を喫すわずか数十年前だった。アッシリアは紀元前670年エジプトを倒し、オリエントを統一するが、各地の反乱を抑えきれず、紀元前612年に滅びる。アッシリアの急激な隆盛と没落は天使によるものだった。


 アッシリアの千四百年の歴史を終わらせたのは、外部からの脅威ではなく支配地域に興った新バビロニアだった。ダニエル書の第一の獣はアッシリアの領土の大半を所有する大国となった。その北方ではメディア王国がバビロニア以上の国土を誇っていた。キュロス二世の反乱でメディアは滅び、新バビロニアはキュロスのアケメネス朝ペルシャに吸収された。キュロスの息子はエジプトを併合、空前の大帝国となる。


 やがてペルシャはギリシャに戦いを挑むが敗北。あらかじめ予定されていた次の覇者には勝てない。それでもペルシャはギリシャに干渉し、ギリシャ人同士を戦わせるようにし向けた。ギリシャでは群雄が割拠し、その一地方にすぎなかったマケドニアは戦いに参加せず、国力をたくわえた。ギリシャの一部とされるが、文化的に異質なところがあった。地理的にはギリシャとペルシャの間にあたり、勢力が強いほうについた。

 紀元前338年マケドニアはギリシャ連合軍を敗り、その後のたった二度の戦いでペルシャを支配する。さらに東方に遠征したため、その領土はペルシャを越えることになる。


 アレクサンダー大王の死後、第三の獣マケドニアは分裂する。分裂しないと強すぎて、第四の獣が苦労するからだ。分裂した第三の獣はどれも、第四の獣ローマに併合される。しかし、ローマの最大版図には、マケドニアの領土の東部が欠けている。セレウコス朝シリアで、東部のパルティアが独立したからだ。完全には計画通りにいかなかったということだ。

 アレクサンダーの東征は兵士の疲労により、インダス河で挫折したが、本来の計画ではインド亜大陸まで、彼の支配地は及んだのだろう。ローマはそれを引き継ぎ、当時の全世界そのものといえる規模が予定されていたと思われる。


 ダニエルは、ガブリエルが描き出した幻により、新バビロニアから帝政ローマに至る、キリスト登場の舞台作り計画を知ることになった。だが、ガブリエルは、幻は終わりの時に関わると告げている。終わりの時ということから、現代人はすぐ二十一世紀のことだと早合点するが、天使のプランでは、救世主が活躍する時代が世の終わりである。世が終わりそうだから、それを救う救世主が必要なのだ。現実に人類が滅亡する必要はない。あくまで救世主登場の舞台としてそう呼んだまでのことだ。


      


 新バビロニアの滅亡で帰還を許されたユダヤ人に、天使は神殿を再建するよう啓示を下す。預言者はハガイとゼカリヤだ。ゼルバベルらの尽力により、啓示からほどなくして、神殿は再建された。これを第二神殿と呼ぶ。イスラエル人はそれでアイデンティティを保ち、彼らの中から新たなる預言者、すなわち救世主が出現し、彼が広大な第四の獣を舞台に宣教を行うプランだ。


 宣教プランの変更だけでなく、肝心の教義内容のほうも、大幅に刷新された。


 どんな企業にとっても、マーケットは広いほうがいいに決まっている。イスラエル人かそうでないかに異常にこだわる初代天使長テラはいなくなった。そもそも、イスラエル人とそうでない人間の違いはどこにあるのだ。アブラハムの長男の子孫やイサクの長男の子孫は、イスラエル人ではない。彼らは滅ぼして、イスラエルだけ守るのはおかしくないか。


 人類は全て神が作ったアダムの子孫ではないか。イスラエルの敵になっている諸国の民も、その先祖を辿ればイスラエル人のひとりくらいいるはずだ。父親や母親がイスラエル人の子供でも、移住して異郷に住むうちに、その国の人間になってしまうことだってある。主の他に神はいないのに、神がイスラエル人だけのものというのはおかしいではないか。


「主はイスラエルの境を越えて大いなる神である(マラキ1:5)」


 周辺諸族との婚姻が普通に行われ、定義が曖昧になったイスラエル人のための宗教よりも、異邦人も含めた全人類の宗教を作り、それを広めることに、天使集団は方向転換していったのだろう。


 そしてもうひとつ。ガブリエルは、千年以上に渡るイスラエルや周辺民族の歴史を見てきて、ある法則に気づいた。それは、自分で蒔いた種は自分で刈ることになるという法則だ。栄えるのも、衰えるのも、イスラエル人が自分で蒔いた種を刈っているだけではないか。自分たちで原因を作っておきながら、結果を神に左右してもらおうという甘い考えにすがってもらいたくはない。


「あなたは多くの国民をかすめたゆえ、そのもろもろの民の残れる者は皆あなたをかすめる(ハバクク2:8)」

「つるぎで殺す者は、自らもつるぎで殺されねばならない(黙示録13:10)」


 攻めれば攻められる。奪えば奪われる。勢いが強いとき、他国を攻めるという種を蒔くから、勢いが衰えると攻められるという実を刈りとる結果になる。個人や国家の運命にも、物理学と同様に、作用反作用の法則が働いている。


 でも、いくら過去の因縁といわれても、こちらは悪くないのに向こうから攻めてくる。そうなるのは、愛が足りないからだ。与えよ、さらば与えられん。愛を与えれば、愛を与えられる。


 生活に不便をきたす律法も問題だ。シナイ山でのイベントのために、張り切って作ったものの、後から冷静に考えれば必要ないものが多い。これらの律法を廃止できないだろうか。


 こうしてガブリエルの指導のもと、律法主義とユダヤ選民思想は崩れ、人類救済へ向けた新たな契約が動き出した。キリスト教の誕生だ。


 ちょっと待った。天使長ミカエルをさしおいて、何故、ガブリエルなのだ。


 新約聖書の内容から、イエスの誕生時にはミカエルはいなくなっていたと推測される。

ミカエルは、以前から自分がただのお飾りになっていたことに気づいていたのかもしれない。計画を立てるのはすべてガブリエル。自分はそれを承認するだけの存在。日本企業でいうと判子押すだけの管理職。


 ガブリエルは頭がきれ、預言者に天の国や神殿を見せることができるほど幻術に長けている。ガブリエルは自分に頼り切っているが、自分がいなければ、より一層活躍できるだろう。ここで身を引くことこそ、主の御心にかなうはず。前任者と違い、自分は一度も主から啓示を授からない。ガブリエルが天使長ならば、主は啓示を下されるに違いない。

 天使長ミカエルは自ら姿を消した。あるいは、生への執着が薄れて、自然消滅したのかもしれない。つまり、天使長は成仏したのだ。


 ミカエルは消えたが、予定通り、地中海周辺を支配する世界帝国ローマは出現した。そこで救世主イエスは、ガブリエルのプランに従い、誕生し、宣教し、処刑された。


 イエスが亡くなり、ローマにキリスト教会ができると、もはやイスラエル民族を残す意味もなくなり、紀元七十年エルサレムは陥落した。二世紀に一時的に復活したが、すぐにローマに滅ぼされ、イスラエル人は離散(ディアスポラ)した。


 捕囚がとけて、一度は神殿が再建されたが、主がエレミヤに約束したようにはイスラエルは栄光を取り戻さなかった。十戒を刻んだ石板が納められたイスラエルの宝、契約の箱は、サムエルの時代にペリシテ人に奪われたが、主の力で取り戻された。それが、神殿破壊以降行方がわからず、失われた聖櫃となった。


 主は約束を破った。具体的にいうと、エレミヤからダニエルの時代にかけて、天使集団で方針転換があったということだ。


「しかし今は、わたしのこの民の残れる者に対することは、さきの日のようではないと、万軍の主は言われる(ゼカリヤ8:11)」


 ゼカリヤは神殿再建の頃、BC518~520年にかけて預言者として活躍した。ゼカリヤ書の前半は八つの幻で、その内容はイスラエルが諸国との闘争をやめ、平和な時代に移行することを思わせる。後半は言葉による啓示で、イスラエルを攻める諸国が主によって倒されるという前半とは異なる内容である。今日では、八章までの前半がゼカリヤが実際に見聞きした啓示で、後半の九章以降は、その内容と文体から第三者の手によるものとされる説が有力である。


 前半の啓示は、オリーブの木や色違いの馬など八つの幻が登場し、謎解きを迫るという恒例のスタイルなので、啓示を下した天使はガブリエルに違いない。


 第三の幻では、ダニエルのときと同様に御使いが二人登場する。名前は記されていないがミカエルとガブリエルだろう。最初の御使いが「エルサレムを測って、その広さと、長さを見ようとするのです(ゼカ2:2)」と言って出ていくと、別の御使いが「エルサレムはその中に、人と家畜が多くなるので、城壁のない村里のように、人の住む所となるでしょう(ゼカ2:4)」と言う。エルサレム神殿再建をほのめかす寸劇だ。


 第四と第五の幻も神殿関係のようだ。第四の幻では大祭司ヨシュアを称え、第五の幻は、二本のオリーブの木の枝先から油が注がれ、「これらはふたりの油そそがれた者で、全地の主のかたわらに立つ者です(ゼカ4:14)」とわかりやすい説明がされ、途中の言葉でゼルバベルに言及していることから、神殿再建の功労者ゼルバベルとヨシュアを油注がれた人とたたえているのだ。


 神殿再建後、主の預言はめっきり減る。救世主の登場が近いので、中途半端な預言者は必要ないのだろう。

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