第32話
古城の死に関して、蒼也はなんら責任はない。これは事実である。調査結果でも因果関係は認められなかったし、真実そうなのだから。
だが、生徒たちには、そうでなかった。古城から1位を奪い、何故か二人きりで行動し、気づけば命の危機に陥り、そして死んだ。死に際しての記憶は、誰にもない。『頂』のせいである、と言われて、納得できるものではなかった。東堂による、古城の盛大な葬儀と説明は、余計に感情を逆なでしたに過ぎなかった。
蒼也が、殺した。
中傷が、疑惑となり、事実に昇華するのに時間はかからなかった。誰も信じない真実には、何の意味もなかった。表立って、行動しようとするものはいない。如何に憎んでいても、殺人を起こす度胸はなかったし、蒼也に勝てる者はそもそもいなかった。かといって、影に回って何かをして、次の標的にされたらどうしよう。
敵討ちと、保身の狭間で、生徒たちは揺れていた。ゆうや、行人のように、蒼也が古城を殺すわけがないと内心思っている生徒もいたが、それを表には出せなかった。それは臆病さでもあり、生き抜くための本能でもあった。
「……やばいな」
「なにが?」
それに思うところがないほど蒼也は鈍感ではない。だが、目下の悩みは、そこではなかった。
『頂』が使えなくなっていたのだ。
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