第31話

 事態はあっけなく終息した。元々、『頂』を使う生徒を学校に迎える場合、その制圧並び事後処理を迅速に行う要員を設置することが義務付けられている。『鉄血毒蜘蛛』の毒ガスを中和し、生徒を助け出し事なきを得た。

 古城と、研究員の死を除いて。

 死因は明らかだった、『頂』の解除による心臓の停止。問題は、古城はともかく何故自前の『頂』を持っていた研究員も同じ死に方をしているかだ。蒼也とみとれの証言、なにより古城の前例もあり『頂を他人に移し替える能力』を持つ『新人類』がいるのは明らかだ。だが、その主は今だ杳として知れない。

 東堂は何も言わなかったが、報道統制並びに手早い事後処理は背後に潜む巨魁を否が応でも想像させた。蒼也も、それが分からないほど愚かではない。一連のことを、何か知っているのは確実だった。そもそも、転校から古城との和解まで、お膳立てが過ぎている。いったいいつから、自分を知っていたのか。それを想うだけで、蒼也はざわついた。いっそ、殴りこめるだけの浅慮があればとすら思った。


「……」

「へえ~離婚するんだ」


 そして、それはできなかった。古城と会う前、いや、古城と親交を育んでいなければこうはならなかったろう。今蒼也に出来るのは、みとれの膝の上で泣くことだけである。慰めるなという命令を受けて、みとれはじっとテレビを見続けていた。

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