第28話

「『毒砲(ズム・ショット)』‼」


 刑部が『鉄血毒蜘蛛』を蒼也の部屋で発動させ、天井を突き破った。そのまま砲台が空に浮く蒼也とみとれを狙い、外壁を貫通し砲撃した。

 

「っと」


 蒼也はそれを易々と避けた。『頂』を発動した状態の彼にとって、それほど難しいことでもない。問題は、弾の尾を引く紫煙だった。僅かに吸っただけで、めまいがする。


「毒か……『轟雷』‼」


 蒼也は何処かに着弾しようとする『毒砲』を雷で焼却しつつ、みとれのために距離をとった。


「刑部先輩のは全部毒よ」

「なら遠距離攻撃だな……てかそのせいで同士討ちしてない?」


 蒼也の言う通り、部屋に充満した『鉄血毒蜘蛛』の毒煙によって、他に集まっていた生徒たちがもがき苦しんでいる。部屋に収まりきらない毒煙は、部屋の亀裂に乗じて外に出たり、校内に侵入しているらしくあちこちで騒ぎ声があがっていた。


「大丈夫かな」

「う~ん……すぐには死んでないし大丈夫じゃない?」

「お前結構怖いこと言うよな」

「だって蒼也様のご褒美が待ち遠しいんだも~ん。どうでもいいも~ん。早く3分たたないかしら」

「あのさあ」

 

 みとれの言動を蒼也が咎めようとしたときに、背後に超速で廻る影があった。神官のような服を纏った、鴉の翼と貌の鳥人である。


「死ね!」

「おっと」

「あ⁉」


 羽を模した2対の剣を振り上げた鳥人に、蒼也は顔だけ向けて息を吐きかけた。息と言っても、蒼也の肺活量から放たれたそれは、強力な目つぶしとなる。


「目―」


 顔を抑えた鳥人が、蒼也の拳を受けて校庭に叩き落されクレーターを造った。


「知ってるか?」

「4位……いや5位の白野先輩。見た通り鴉人間になれるの」


 白野の襲撃が契機になったかのように、続々飛行能力を持つ生徒たちが蒼也の元を目指して襲い掛かってきた。とはいえ、徒党を組んでも蒼也の敵ではない、刑部の『毒砲』に注意を多少払う程度で、難なくうち倒されていく。


「操られてるのかな。そういうのいる?」

「う~ん、上位の人にはいないと思うわ」

「亀男が心配だ、行こう」


 一通り生徒を片付けると、蒼也はみとれを抱いたまま校内に戻った。蔓延する毒煙を吐息で掃き散らしながら、倒れて苦しむ生徒を無視し古城を探す。ゆうや行人、東城も気にならないわけではない。だが今のところ蒼也は古城が一番の気がかりであり、みとれは古城以外はどうでもよかった。

 


 

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