第24話

 最高の一週間だった。

 学んで、遊んで、寝て、起きて。幸せな時はあっという間というが、蒼也にとってこの一週間はまさに瞬きの一瞬だった。装置の使い方、『天罰』を身にまとうための練習、鍛錬。すべきことが無数にあった事もあるが、何より楽しかった。

 古城と、みとれ。ゆうと行人も呼んで近くでやっていた祭りに行ったのも忘れ難い。円たちと行った時とは違う、『家族』ではなく『友人』との外出だ。嬉しくて調子に乗って食べ過ぎ、帰りは古城におぶってもらった。

 古城には時折それらしき研究員がやってきて接触していたが、あくまで1週間は自由らしかった。東堂理事長に話を通したと古城は説明したが、ますます正体がわからないと蒼也は思った。そして、『頂』のせいで眠ることすらできないにも関わらずそれを少しも表に出さない古城の強さに改めて畏怖を持った。そして、少しでも古城のために出来ることはないかと奔走する生徒たちにも、今までのように無関心ではいられなくなった。円にも連絡し、何か対策がないかを聞いてみたが芳しい返事は得られず、悔しい思いすら抱いた。

 『強い』とは、『頂』とは、『人望』とは。

 考えることすらしない、ただただ盲目的に『祭典』を目指して、古城も訳のわからないどうでもいい存在だった蒼也の中で何かが変わろうとしていた。


「溜まってない蒼也様?」

「そういうのやめろ」

 

 その日は、在校生や今まで世話になった生徒と過ごしたいと古城が申し出て、蒼也はみとれと部屋にいた。急な空き時間は、焦燥感をかきたてたが、かといってできることもなく、思考の時間となった。

 多感な蒼也と違い、みとれは変わらなかった。蒼也にまとわりつき、触れ合いを望んだ。


「お前はさ、なんかこう……なんかないの?」

「なんかって?」

「だから、亀男のこともだし、あいつのために皆がんばってるじゃん? そういうの」

「ん~知らない!」

「ええ……」

「あたしには蒼也様いればいいもん。ねえ溜まってないなら『頂』使ってよお」


 蒼也はため息を吐き、改めてみとれを眺めた。 

 黒のワンピース、細い体に病的なほど白い肌。紅潮を別にすれば初めて会った時と寸分たがわぬそのままの姿がそこにあった。


「う~ん……」

「どしたの? あ、ムラッとした?」

「やめろ。……なあ、そういえばオレお前のことよく知らない」


 本来、蒼也の生命線である。だが、あまりに従順な姿勢と露骨な誘惑をあしらううちに、彼女に対し『そういうもの』であると蒼也は勝手に決めつけていた。

 今になってともいえるが、今こそみとれを知りたいと思った蒼也のその想いは、成長の証なのだ。


 

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