第6話 好きな

前話に引き続き、今回は「好き」について書き留めてみる。



この世でいちばん好きないきものである。

ただ、人に馬が好きな事を話すと大抵

「目が綺麗だよね」と言われるが、さして実感は無いのである。

以前、馬に関する仕事をしていたので、キレちゃった馬の目も沢山見てきたから

(イヤイヤ、キレてる馬の目は怖いよ。身の危険感じるもん。雷の音でキレちゃった時は特に。理性ぶっとんで野生むき出しだもん)


「草食動物だからやっぱりみを守るために蹴るんでしょ?」とも言われるが

(乗馬クラブの馬なら滅多に蹴りません。どっちかと言うと噛まれます。ヤツらはスキを狙って来ます。)


「人間に甘える事ってある?」と聞かれたこともある、人が大好きな馬は甘えてくるよ、と答えるようにしてますが。

(確かにあまえんぼさんもいます。だけどヤツらは人間が非力なのは考えないのでスリスリして人を吹っ飛ばしたりします。居眠りしたかったらしく私の肩にアゴを乗せる位ならカワイイけど前に立っていたら頭の上にアゴを乗せられてよろけた事もあります。甘噛みされてパーカーに穴が空いたし、背中を向けていたら汗をかいて痒かったらしく私の背中に顔を擦り付けてシャツが真っ黒になったこともあります。)


では、なぜ馬を好きになったのか?


それが私にもわからないのである。

なにせ実際に馬を見た事もないのに、ものごころ付くか付かないかの頃にはすでに馬の物を欲しがったらしい。


私の最初の記憶は、母が弟の出産で入院している病院にお見舞いに行った時に昼ご飯を食べにレストランに行った時の事である。

今で言うファミリーレストランのハシリみたいなお店だったのだがそこで一目惚れしたぬいぐるみのキャンディ バスケットを付けた赤い馬を買ってもらった事だ。

小さい時にほとんどおねだりをしなかった私が

珍しくお願いしたのでけっこうすんなりとかって貰えたのである。


ちなみに何十年も経ってしまったが、その赤い馬はまだ部屋のタンスの上に飾ってある。


ボロボロで見る影も無いけれど

もう幼い頃の様に「お馬さんパカパカ」と言いながら遊ばないけれど

唯一とってある幼い頃からのオモチャ。


おそらくそれと引き替えに本物の馬をあげると言われても手放さないに違いない。


私の朱馬
















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脳内メリーゴーランド 穂波 類 @zoso

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