第4話 母

小さい頃から母には言葉使いには気をつけるように言われて育った。

感謝しているが今も思い出す度に赤面する思い出がある。


甚だ尾籠な話だが小学5年の林間学校の時に

夜、クラスの女子全員が雑魚寝していた。


最初はボソボソと話し声がしたものの、徐々に皆んな眠りに落ちていったらしく部屋には静けさが訪れていた。


その中、静かな部屋にある音が響いた。


そしてクスクスと笑い声がした。


そう、下半身のラッパが調子外れな音をだしたのである。


暫くして


「ごめん」


と謝りの言葉があった。


部屋は落ち着きを取り戻したが私はそれどころじゃなかった。


(え?「ごめん」でいいの?そんなんでいいの?オナラをしたら「ごめんあそばせ」って言わなきゃダメなんじゃないの?)


モヤモヤを抱えたまま帰宅した私は母に尋ねた。


「ねぇ、オナラしたら ごめんあそばせ、って言わなきゃダメなんだよね?」


母は言った。


「別に?謝ればいいんじゃないのかしら?でも丁寧な言葉使いの方がいいでしょ?」


結構な衝撃を受けながらまた私の頭の中はグルグル回転を始めた。


(はい?小さい私に「オナラをしたら、ごめんあそばせ、でしょ?ちゃんと謝るようにしてね」と教えたのは何処のどいつだ?あと「人の前を横切ったり、跨ぐ時もちゃんと ごめんあそばせ、してね」とも言ってたよね?別に、だとぅ? おかしいと思ってたんだ。幼稚園にはいってから誰かが「ごめんあそばせ」って言ってるの聞いた事ないもん。よかった、本当に良かった。皆んなの前で言わなくて。恥書く所だった)



こんな事があった為に私は今だに「ごめんあそばせ」と言う言葉を聞くと、林間学校のラッパ事件と母のシラッとした顔を思い出す。


そんな母にはここ何年かで変な言葉を使い出した。

間違ってはいないが、耳にする度に

「どうしちゃったんだろう?」

と思うのである。


物を落としたり、料理中に調味料を入れすぎたり、ドアを閉めた時に大きな音がした時に

こう叫ぶのだ。


「Oh my GOD!」


ちなみに発音は「おーまいがっ!」である。


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