第9話 トーマス青空

オレは今日もテニスコートへ走る!


そしてなんとか間に合う。


説明が終わってその場を離れようとすると、


「おい、お前。副キャプテンから2、3年と一緒にやっていい許可が下りたからランニング終わったらラケット持ってこい。」


と山崎川崎が言った。


よっしゃ!


オレはあれから落ち込んでいた。


だけど間違っていなかったんだ!


オレの影響もあってか、暇さえあれば一年達はボールを取る隙を伺うようになった。


それだけじゃなく先輩達の機嫌も気にするようにまでなっていた。


オレはせっせと練習に励んだ。


夏休み間近になってる頃には、3年達は大会に負けて、オレ達も打てる機会が増えた。


気付く頃には、オレとシゲル、そしてウィリアムズはメキメキと上達していって、気が付くころには、先輩達とも打ち合えるようになっていた。


ある日、先輩の一人が試合をしようとオレに言って来た。


「ヒヒヒ、オレはキレのあるサーブが特徴的な事で知られる、


サーブの鬼ことサーブの重鎮ことサーブの名人こと、トーマス青空だーーーーーー!」


自分で言うだけあってキレのよいサーブ!


ビシッとサビースラインぎりぎりの所に打ち込まれた。


「なっ、なんだコレはっ!」


オレは目を疑った。


ボールは3秒、いや10秒くらいほど、シュルルルル!と回転しながらコートに跳ねずに食い込んでいたのだ!


(え……これってどうすれば……。)


とオレが10秒ほど固まっていると、


瞬時に、ビヨヨーン!とボールがオレの顔面向かって飛び跳ねたではないか。


ボールは寸でで、オレには当たらず済んだが、そのまま雲にも届きそうな勢いである地点で見えなくなった。


そしてボールは、その後ズドーンと音を立ててコートの上に落ちて来た。


あまりの衝撃でオレは遠くに吹き飛んで、コート脇のフェンスに叩き付けられた。


恐る恐るそこを見ると、隕石ほどの穴がコートに開いていた…。


—それから部活の活動はほとんど、その穴を皆でスコップで埋める作業にあてられてしまった。


そんなこんなしてる内に、オレらは夏休みへと突入していく。

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