第8話 つばさウィングつばさ
その時は三時間目だった。
オレ達は下敷きをうちわにしながら、英語のジェームスブラック先生の話を聞いていた。
オレは窓際から空を見ながら、
(そろそろ暑くなって来たな。)
などと心の中で呟いていた。
—その日も授業が終わり、テニスコートに駆けて行った。
今回はなんとか間に合った。
「よし、3年は今度の大会に向けての試合形式の練習。
2年は乱打でもしておけ。
それから一年はランニングして、球拾いだ。ちなみにオレは山崎川崎だ。」
オレとシゲルは、愚痴を漏らしつつ走る。
「チェッ、早く思いっきり打ちたいぜ。」
「はやく大会負けてくんねーかなw」
とさりげなくシゲルはこぼした。
後ろからシュダダダダ!と何者かが駆けてくるではないか。
そいつは砂煙をオレ達にプレゼントし、横切って行った。
「おそいぞー!君達ー。」
ウィリアムだった。
「あんちくしょー!」
オレ達もあとをおっていった。
—走り込んだ後も、球拾いをする。
ある時、オレが面倒臭げに立っていると顔面目掛けてボールが飛んできた!
オレは持ち前の反射力でそれをキャッチした!
するとそれを見ていた一人の男がオレに近づいて来た。
「きみ、ちょっとだけ僕とオレと打ってみようか。」
「え、あなたは……?」
「僕は副キャプテンのつばさウィングつばさだ。」
—1年やら二、三年の生徒たちがコート脇で見守る中、オレとつばさウィングつばさ先輩とのラリーが始まった。
つばさウィングつばさは試合中に背中から翼を生やすことができるらしい。
めったには見せないが。
(うおー、この展開燃えるぜ!)
震える手、速くなる鼓動、胸が熱くなる!
体が躍動している!
しなやかなフォームでつばさウィングつばさのサーブが放たれる。
オレはかすりさえもできず、ラリーは終わった。
「ありがとう、戻っていいよ。」
つばさ先輩はそう言った。
オレは正直恥ずかしかった。
コートの横からはこんな声が聞こえてくる。
「なんだあいつ、てんでダメじゃん。」
「かっこつけやがって……。」
オレは顔を赤らめながら球拾いに戻って行ったのだった。
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