第6話 歓迎遠足

今日は木曜で、明日の金曜はまちにまった遠足だ。


ということでオレとシゲルはスーパーにおやつを買いに来ている。


駄菓子コーナーでしゃがみながら物色していると、


角から入って来たのはキングススーパーウィリアムズだった!


ウィリアムズはオレに気付くなり、目つきを鋭くしてから、しらんぷりをきめこんだ。


オレは長い事考え、そしてやっとある一つのポテチップスの袋に手をのばした。


「バリリッ。」


ウィリアムズも同じ袋をとったではないか!


オレとウィリアムズは無言でポテチを引っ張り合う!


やがてウィリアムズの指が掴むところの面積が、ズルズルとなくなっていき、そしてオレはやっとこさポテチを奪い取ったのだった。


するととたん、すごい形相でウィリアムがオレを睨みつけて来た。


「お、お前……覚えてやがれ!」


悔しそうに歯をギリギリ言わせながら言って、ウィリアムズはお菓子コーナーから消えていった。


—当日。


場所は近くにあるただの森だった。


オレはせめて遊園地とかにしろよ、とうなだれた。


森まで学校に来たバスで行き、そこにつくなりまた長ったらしい三拍子西岡の説明がはじまる。


それもようやく終わると、今度はやる気マンマンの汗水流男が先頭でしきりだし、山の中を歩いていった。


オレの後ろや前には、ホッキョクグマや貞子みたいなやつとかが歩いている。


オレがぼーっとして歩いていると、ふとずーっと前の方の女に目がいった。


ツヤツヤした長い後ろ髪。


いかにもいい匂いがしそうな髪。


あぁ、かぎたい……。


かいでかいでかいで、この手でめちゃくちゃにして体中をペロペロしてぇぇぇぇぇえ!


などと思ってるうちに、山頂についていた。


オレ達はもうクタクタ、いよいよ弁当タイム!


シゲルとシートを広げてそこに座った。


「なぁ、あの子名前しってるか?」


と食べながら前の列にいる女を目で合図しながら、きく。


「さぁ、しらね。」


「ふーん。」


会話は終わった。


山からは蝉やらコオロギやら、鳥やらの声だけが響いている。


間をおいてシゲルが聞き返してきた。


「好きなのか?」


「ちげぇよ。」


オレたちは弁当を食い終わった。


が、そこは森の中。


それ以上のイベントはあとはもう何もなく、おやつぐらいだった。


オレとシゲルがゆっくり食べているとふと、視線を感じたのでそっちを見る。


その先にはものすごい目つきで、ウィリアムズがお菓子を食べながら、こっちを見ていた。


(どんだけポテチ、根にもってんだよ。)


と思いつつ、お菓子を食べ終えた。


そしてまた三拍子の長ったらしい説明を聞き、うとうとしつつバスに乗り、家路についたのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る