パンツ記念日

(性的な描写が一部存在します、ご注意ください)








 夕方。

 部活帰りに、川沿いの土手を2人で歩く。

 僕の隣にいるのは、自分の彼女である、1つ上の彩音先輩。



「なぁ、結人ゆいと

 手を繋いだまま、先輩が話しかけてきた。

 もちろん、付き合う前からも変わらない、ボーイッシュな口調で。

「どうしたんですか、先輩」

 すると先輩は、少しムッとした顔をして、繋いでいた左手を離し、僕の口をふさぐように、唇に人差し指で触れた。

「2人のときは先輩禁止、敬語も使うな、って言っただろう?」


「あ、」

 はい、すいません、と言いかけたのを、彼女の手を優しく包み込むように口から離し、

「あ、うん。ごめん、彩音あやね

 と返した。

 先輩…彩音は、満足げにニコッ、と笑う。

「それで良し」


「で、さっき、何言おうとしたの?」


「ああ、明後日さ、お前の誕生日だろう?」


「うん」


「だからさ、、お前んち行きたいんだけど、いいか? 明日、学校休みだろう?」


「うん、いいよ」

 ……誕生日、か。

 プレゼントは何だろうなー。






 翌々日。

 僕の家にて。

「結人、誕生日おめでとう」


「ありがとう」


「はい、プレゼントだ。」


「え、ホントに!?ありがとう!」

 小さな、リボンと紙に包まれたプレゼント箱をもらう。

 具体的には手のひらを箱の底が覆うくらい。

 中身はなんだろう。

「ほら、早く開けろよ」


「う、うん」

 彩音に促され、期待に胸を膨らませながら、ゆっくり、丁寧に包装を解いていく。

 箱の中から出てきたのは腕時計。

 腕時計自体は、前からほしいと思っていたが、僕が驚いたのはそこではない。

 重厚とも言えるデザインに、外周のパーツの色は少し濃い目のブルー。

 果たして高校生に買えるのかどうか、と思えるほど、高級に見える。

「え…?」

 いろいろな意味で驚くしかなかった。

「デートのとき、時間見るのにいつも携帯使ってただろう? これからはそんなことしなくてもいいように、と思ってさ」

 完敗、だった。

「なあ、着けてみろよ」


「う、うん」

 言われた通り、左手首に巻いてみた。

 少し、ずっしりとした重さが逆に心地良い。

「おお、やっぱり似合ってるな。それから、さ…」


「それから?」


「その…学校とかでも、着けてて欲しい、っていうか……べ、別に着けなくてもいいんだからな!?」

 え、何このツンデレ。

 無茶苦茶カワイイんですけど。

「うん、ちゃんと毎日着けるよ」

 彼女の頭を優しく撫でながら答える。

「そ、そうか…」

 満更でもなさそうな彩音の顔が、熟しかけたりんごになっていた。




「それとさ」

 落ち着きを取り戻した彩音が言った。

「今日はさ、お前の誕生日だから特別に、私に出来る事だったら、何でも1つ言うこと聞くよ。…但し、あんまり恥ずかしいのは無しだぞ?」

 これまたサプライズ、だった。

 腕を組み、頭の中でウンウンと唸る。

 …。

 ……。

 ………。

「べつにないなら、無理して出さなくてもいいからな?」

 これ、いいのかな…。

「あ、あのさ…」


「うん? なんだなんだ?」

 よし。

「あのさ…言いにくいんだけど…」


「どうした急に?もうそんな遠慮しなくてもいいのに」

 膝を折り、床に手を付き頭をこすりつける。

 要は土下座で言ってみた。




「彩音のパンツ、見せて下さい」




 無音。

 ここは宇宙か、と思うほどの静寂を破ったのは、彩音だった。


「馬鹿かお前はーーー!? いいわけ無いだろ、そんなもん!」


「ごめんなさいっ!」

 やっぱりだめだったか。

「……結人、顔上げろ」

 恐る恐る、彩音を見上げた。

「そういうのは、デリカシーがない、って言うんだぞ。分かってるだろうな?」


「…はい」


「…それで、なんでその…わ、私の下着なんか見たいんだ…? ネットにいくらでもあるだろう、そんなものは」


 恥じらい、という表現しか思いつかない彩音の表情。

 やっちまったなあ、と思いつつ、供述を始める。


「なんだろう、その…まあ、僕も男だからさ、女の子の下着とか、確かに気にはなるんだけど…そうじゃなくって、彩音の下着だから見たい、って言うか…」


 彩音は何も言わなかったが、理解できない、というような顔になっていた。

「何だ…?その…私のだから見たい、というのは…?」

 考えるような話し方で質問を重ねる。

 これには、答えは1つしかない。

「好きだから」


「ん…?」


「まあ確かに、道歩いてるときに、目の前の女の子のスカートがめくれて、パンツが見えたときは、『やった!』とは思う。でも、それは体が本能的に反応してるだけで、別にどうでも良いんだよ。でも、僕は彩音が心から好きだから、理性的なところでも、1度くらい、見てみたいなー、って思ったんです」

 最後は、1語1語切るような言い方になった。

 彩音は、それを聞いて、

「好きだから、か…」 


「うん。やっぱり好きな女の子のじゃないと、あんまり見ても面白くないから」

 弁論を重ねる。

 全く何を言っているのだろう、僕は、と思った。

 なぜ彼女の下着を見たい理由を、こんな半ば必死に説明しなきゃいけないんだ。

「な、なら…仕方ない、かも、な…」


 顔を完熟しきったリンゴのように真っ赤に染め、僕を見た。


「は、早くしてくれよ…は、恥ずかしいから…」

 目をそらし、顔を僕から少しそむける。

 今日の彩音は、デニムのショートパンツ。

 彼女の腕は背中の後ろに回されている。

 脱がせ、ということだろう。

「そのまま、下に下げれば脱げる、から…」

 その言葉に従い、おそるおそる、腰に手を持っていく。




 ゆっくりと、彼女のシャツの裾に手をかける。


 心臓の鼓動が手に伝わり、汗腺が活発になっているのが分かる。


 彼女を汚さぬよう、丁寧にめくる。


 白い素肌が、シャツの中から少しだけ見えた。

「う、上は…ダメだからな…?」


「うん、分かってる」


 そして。

 ショートパンツの、腰のゴム部から指を入れていく。

 すぐに、中で1枚の布が、爪に引っかかった気がした。

 間違いなく、これが彼女の下着だろう。

 そしてその下には、生まれたままの彼女がいる。


 なるべくこれ以上素肌に触れないように気をつけながら、慎重におろしてゆく。


 だんだんと、その中身があらわになる。

 やがてズボンの裾が膝についたあたりで、一旦手を止めた。

 彼女の腰をあえて見ないようにしながら、もう一度聞く。

「ズボンさ、脱がしても、いい…?」


「う、うん…」


「じゃあ、いくよ」

 先程よりも更にゆっくりとおろす。

「足、上げて」

 可憐としか表現しようのない脚が、恥じらうようにゆっくりと外れていく。




 完全に露わになった、彩音の下半身。

 ピンクの布地に、小さな白い水玉をあしらった、小さなショーツが腰を覆っている。

 当たり前だが、初めて見る「彼女の」下着。


「あんまり、ジロジロ見るな…恥ずかしいから…」

 ある種の衝撃に、何と言えばいいのか分からない。

「その…可愛い、じゃん。うん」

 思わず、触れてみたい、彼女の中身をさらしてみたい、と思ってしまっていた。

「あ、ありが、とう…?」




 立ち上がり、彼女の唇にキスをする。

「ごめん、わざわざ…」


「結人がいいなら、それでいい…」

 そのまま押し倒したくなる衝動を限界ギリギリで抑えながら、聞いてみた。

「あの、さ…上は、どんなの着けてるの…?」


「お、お揃いの、やつ…」


「あ、脚…触っても、いい…?」


「うん…もう、いいよ…」

 またしゃがみ、今度は太ももに触れ、やはりゆっくり、上へ上へと、指を這わせる。




 足の付け根。

 ここから先は聖域である、と境界線が触れた人差し指に告げる。

 ついに境界を超え、聖地たる彼女の秘所を目指す。




 ついに聖地が目の前に現れた。

 彼女の脚を伝う脈が、手に直に伝わり、僕の脈とリンクする。

 おそるおそる、その綿地の上から、聖地に到達させる。


「んっ…!」

 ぴくり、と彼女の体が反応した。


 もう一度、今度は親指で、なぞるように触れる。

「あっ…そ、そこは…らめっ…」

 この邪魔な布を今すぐ剥がしたくなるのを抑え、再度立ち上がりながら、体の中心線をなぞっていく。




 へそに到達したあたりで、今度は両手を彼女のシャツの中へ入れ、背中に回す。




 また、布に当たる。

 邪魔だ、とは思ったが、ホックは外さず、そのままスルー。

 体を引き寄せ、お互いの唇を合わせる。

 唇だけでは飽き足らず、示し合わせるでもなく、舌を差し込む。

「ん、んんっ…」

 いつの間にかシャツから離れた手は、彼女の首に回っていた。

「なあ、結人…」

 顔を離した後、上気した赤い顔で彩音が言った。

「お前の部屋、行きたい…」


「うん、行こう…でも、ズボン履いて、彩音…」


「お前が脱がしたんだ、ろ…」


「じゃあ、手伝う…」




 彼女にショートパンツを再び履かせ、部屋へ上がっていった。




 はじめて、彩音と2人きりで過ごした誕生日。

 僕の中で、ずっと思い出になるだろう。

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