流れるもの、流れないもの        055

55 滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ

 たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なきこえけれ


【カテゴリ】人生、時代

【タグ】男性 貴族 平安中期 千載集


【超訳】名声は涸れていないようだね。

その昔、素晴らしい滝があったらしいが、今はもうその面影はない。けれども滝は流れていなくともその名声だけは今も流れているようだね。


【詠み人】大納言公任だいなごんきんとう

藤原公任ふじわらのきんとう。藤原定頼(64)の父。和歌、漢詩、管弦に優れ、「三舟の才」と称される。「三十六歌仙撰」の著者。


【決まり字】たき(2)


【雑感】京都大覚寺に紅葉を訪れたときに詠まれた歌だそうです。以前は天皇の離宮があり、滝を眺めるための滝殿たきどのまであったそうですが、二百年の時を経て滝も涸れ果てていたそうです。

 昔はさぞ美しく綺麗な滝があっただろう。今その滝は涸れてしまっているけれど、名声だけは今も残っていますよね、と詠います。

 二百年も時が経てば、変わってしまうものの方が多いのでしょう。それでも変わらないものもある。その名声のように。時が流れ、流れなくなるものと、まだなお流れるもの。うう~ん、深い。

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