女性の悲哀 053
53 嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る
なげきつつ ひとりねるよの あくるまは いかにひさしき ものとかはしる
【カテゴリ】女子悲恋
【タグ】女性 貴族 平安中期 拾遺集 恋
【超訳】私のことなんかなんとも思っていないんでしょ?
あなたはそうやって毎晩毎晩いろいろなところにお通いかもしれないけどね、こちらがどんな夜を過ごしているかご存知? 知るわけないわよね。どうせなんとも思っていないんでしょ、私のことなんて。
【詠み人】
日本三大美人のひとり。夫との生活を回想した「蜻蛉日記」の作者。
【決まり字】なげき(3)
【雑感】一夫多妻制の悲哀ですよね。結婚はしたものの、夫は他の女性の元へも通っていく。この日、ひさしぶりに自分の元へやってきた夫をこの方は家へ入れようとしませんでした。するとダンナは「待ちくたびれた」と言って別の女性の家に行ってしまったそうです。そして翌朝この方はダンナにこの歌を送りました。
ほらね、あっちこっちに遊びに行っているとこんな想いをさせてしまうのよ、女性に。それでも公然といろんなタイプの女性と付き合えていいな~って思います? 男子の皆さん。
この方もね――、拗ねて家に入れたくない気持ちは痛いほどわかります。そこでなんとかして欲しかったですよね、ダンナに。「ホントに好きなのはキミだから」とひとまず許してもらえるまで愛の歌を送るとか、とりあえずプレゼント攻撃するとか、ひたすら謝ってみるとか……。でも意地を張りすぎていたら帰っちゃった。しかも別のオンナのところに。もう悔しすぎる。哀しんでいることすら腹が立つ。いっそ嫌いになれたらいいのに。
ダンナも「入れてくれないならいいよ、せっかく来てやったのに」なんていいながら別の女性のところに行くなんて逆切れじゃんか。
この時代の女性の気持ちを代表している歌だと思います。お気の毒。お可哀想。けれどもワタシはもうひとつ別にご同情したい点があります。
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