好きの尺度               019

19 難波潟 短き蘆の 節の間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや

 なにがた みじかきあしの ふしのまも あでこのよを すぐしてよとや


【カテゴリ】女子悲恋

【タグ】女性 貴族 平安初期 新古今集 恋


【超訳】ほんとに終わりなの? 

ほんの少しの時間だって逢えたらいいの。それなのに「もう会えない」なんて手紙だけで終わりなの? このままあなたなしで生きていけって、そう言うわけ? 


【詠み人】伊勢

伊勢守・藤原継蔭の娘で宇多天皇の后に仕える女官。のちに天皇の寵愛を受けて御息所みやすんどころ(天皇の子どもを産んだ人)となる。三十六歌仙のひとり。


【決まり字】なにはが(4)


【雑感】「たとえ会える時間が5分だとわかっていても、1時間かけてその人に会いに行く?」なんてガールズトークを昔しました。相手が大好きな人なら行きますよね。1時間どころか1日だって、どれだけかかっても大好きな人に会えるなら会いたいのが乙女心ですよね。それが「え? 5分しか会えないの? 1時間もかけて行くのに? だったら別の日にしよっか?」なんて思う場合もあるでしょう。大抵はこちらのパターンかも。

 お互いが同じ感覚ならうまくいく。それが恋愛でも友情でも。5分しか会えないけど1時間かけて会いに行きたいってお互いが思っていれば想いの尺度は同じということでしょう。そっか、じゃ別の日にしよっか? とお互いが考える。それだって想いの尺度は同じでうまくいく関係だと思います。やっかいなのはお互いの思っている尺度が違うとき。これが人間関係をフクザツにさせるんでしょうね。今も昔も。

 この伊勢さま、ずいぶんと恋多き女性だったようです。この歌は最初の恋人のそっけない手紙に返した歌だそうです。ほんの少しでいいのよ、そんな時間も割いてくれないの? 私のことはもう好きじゃないの? 

 こういう方ってその時その時はその人を全力で好きになるのかしら。全力で好きになって、全力で落ち込んで、また次の人を全力で……。羨ましいような気もするけれど、気づかれしそうでタイヘンそう……。

 この伊勢さま、宇多天皇のお妃さまに仕えていた女房でしたが、天皇の寵愛を受けることになって子供を産みます。その後はその天皇の息子(自分が産んだ子ではない)とも交際し子供を産みます。勤め先のダンナさんのアイジンになって子供を産んで、そのダンナの息子とも付き合って……。現代感覚ではとても理解が追いつかない生涯を送られた方です。容貌も心情も美しい女性だと伝えられています。見た目も素敵で性格も美人。まぁ、おモテになったんでしょうね。

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