Scene27 世界の中心を染める色

オーストラリア・エアーズロック


地球のへそ

地球の心臓


そんな風に形容される世界で2番目に大きい一枚岩

その高さ、335m

ビルで換算すれば100階以上の高さだ

この岩以外は荒涼たる赤い大地が見渡す限り広がっている


赤茶色の大地が広がっているそこが

赤い夕陽に照らされる夕刻の情景は圧巻だ


空が燃える

水色だった空が

砂色に

薄橙色に

そして橙色

夕陽が赤みを増やす

朱色

緋色

茜色


空の赤みが大地を覆う

褐色の岩が次々へと色を変える


茶色から赤までのすべての色素がここにある

一刻一刻

一筆一筆

刻をきざむたびに

水彩の赤の絵筆で茶の岩を染めていく

夕陽を受けるその岩はそれと混ざる赤へと衣装を纏う

一枚一枚

薄い赤のヴェールを纏うたび

赤の要素が増していく


やがて赤みを極めたその岩は

ゆっくりとその色味を落としていく

今度は夜空が岩の色を溶かしていく

紫色から藍色へ

紫紺から瑠璃紺へ


岩も

大地も

大空も

すべてが宇宙そらの色に染まる


オーストラリアの先住民族アボリジニの心臓

人工の照明がなにひとつない夜に

彼らの心臓も眠りにつく


夜明けに宿を出て

朝焼けとともに岩を登る

地球のへそのてっぺんの景色

ここは同じ星だろうか

あの高層ビルが林立する

私たちの母国と同じ星だろうか


先住民族アボリジニとってここは聖地だ。

祭祀などの特別の官職の者しか岩には登らない。

「わたしたちはウルル(エアーズロック)に登りません。どうかウルルに登らないでください」

現在はこんな看板が今では立てられているという。

登るか、登らないかは各々の判断に任せられることになる。


映画『世界の中心で愛をさけぶ』ではここは象徴的な場所としてここが描かれる。

想い合うふたりの高校生がここに行きたいと願い焦がれる場所として。

「世界の中心」と形容された。


間違いなくここは世界の中心だ

生きていると

小さな自分も生きていると

広大な地球も生きていると

理屈でなく

感じられる


そんな場所


変幻自在に色を変える「世界の中心」

そんな世界の中心で

自分もまた臨機応変に色を変えられるよう

意固地な色でとどまっていないよう

けれどもウルルのように意思をもち

大地を踏みしめる

ゆるやかに

たおやかに

しなやかに


そんなことを考えてみる




【描写した場所】

オーストラリア・ウルル・エアーズロック

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