Scene16 人々が願う暖灯色の星

タイ・チェンマイ


 紙製と思われる生成り色のコムローイ(熱気球)。

 大きさは直径が70センチ程度で高さが1メートルほどの円柱。

 その円ちゅうの底辺には針金らしきものがクロスされていて、中心に灯籠を置けるようになっている。

 灯籠に火をつけて、紙の帆の中に熱をためる。熱気球のスタンバイと同じだ。

 祭りに参加する大勢の人々がコムローイの準備をする。


 やがて人々は一斉にそのコムローイを空へと放つ。

 無数の白いランタンが空へと浮かび上がる。

 灯籠の暖色の炎をたたえて紙の帆は内側からオレンジに染まる。

 数え切れないオレンジのランタンが漆黒の闇に放たれる。


 写真集には「人間が作った星空」とある。

 空がランタンで埋め尽くされる。

 水面には壮大な灯りの夜空が映される。


 ゆらゆらと。

 ゆっくりと。


 かなり広い範囲から放たれるオレンジのコムローイを地上から見上げるとまるでそれは天空からぶら下げられたペンダントライトのよう。

 やがてどこまでも上昇して、夜空に吸い込まれていく。


 毎年11月の満月の夜に行われる仏教のお祭。

 このコムローイに人々はブッダへの感謝を込め、日々の生活が幸福であるようにとの願いもこめて空に捧げられる。


 息をのむこの絶景はディズニー映画「塔の上のラプンツェル」のモデルにもなったそう。


人々が作り上げた星空

願い事の数だけ瞬く星


望みが叶うとされる望月(満月)の夜。


どうか

どうか

叶いますように。


今日の日をありがとう。


明日も……、幸せでありますように。



【描写した場所】

 タイ・チェンマイ・コムローイ祭


 ※参考文献

 365日 世界一周 絶景の旅   いろは出版

 

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