Scene12 緑の息吹は金色《こんじき》の恵みに
バリ島 ウブド・テガカラン
バリを訪れた際に見てみたかった景色がある。
有名なライステラスのあるところはカフェになっており、軽食を楽しみながら、景色を楽しむことができる。
道路から店に入るが、座席はそこにはない。
カフェも棚田のように段差があり、その崖のようなわずかなスペースに客席を設けている。店のエントランスが道路沿いの一番高い位置にあり、客席は下へ下へと降りていくことになる。
私達が通されたのは靴を脱いであがる小上がりスタイルのお座敷だ。
座敷といってもゴザが敷いてあり、テーブルが置いてあるだけの簡素なものだ。
崖側の壁以外は柱が屋根を支えているだけで、壁はない。
屋根も藁葺きだが、この簡素感がまたなんともいい。
他の客もそうだが、壁際にもたれかかり足をのばして座り、前面の景色を楽しむ。
ときおりオーダーしたドリンクやインドネシア料理をを楽しみながら。
目の前は視界の限り棚田だ。
田んぼ1枚1枚がとても狭い。
よくこんな山を田んぼにしようと思ったものだ。
恐らく農業用の重機は入れない。
人の力で開墾し、
田んぼにし、
稲作を可能にした。
訪れた時期は10月。
植えられたばかりであろう若い緑の稲穂がまっすぐ天に向かって伸びている。
南国の陽射しを一身に受ける。
気候が温暖だから2期作、もしくは3期作の地域もあるらしい。
棚田の合間合間にヤシの木があるのが、いかにも南国らしい。
時折吹き抜ける風も心地よい。
同じ風が緑の稲穂も揺らしていく。
サワサワサワ
カフェは予約をしないと入れないくらい大盛況で、
さまざまな国籍の人たちで座席は埋められているのに、
不思議と皆が静かなのだ。
だから
風が稲穂を揺らす音も聞こえる。
世界中から集まった人達が
この1軒のカフェで
ゆったりと
まったりと
南国時間を満喫する。
いずれは見事に成長して、風に揺れる緑の穂。
やがてその穂は先端に恵みを含ませ、
緑の色素から、
白茶色に変化を遂げたなら、
夕暮れには
その金色がもたらしてくれる
白銀の米。
伸びやかな気候と
緩やかに流れる時間と共に味わう
こういう絶景もある、と思わせてくれる。
【描写した場所】
バリ島・ウブド・テガカラン テラス・パディ・カフェ
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