Scene21 空一面の極彩色の華

 中国に駐在していた頃の自宅にて


 中国では頻繁に花火を打ち上げ、爆竹を鳴らす。


 その昔、神話の時代には人々の暮らしは危険と隣り合わせだった。

 すぐ近くの森や林には獣が住んでいる。

 人を襲ったり畑を荒らすことも珍しくなかった。


 人々は夜になると身を寄せ合いお互いを守り合った。

 獣が近づかないように爆竹を鳴らして脅かした。

 やがてその牽制は功を奏し、獣は人々に近づかなくなった。



 そんな時代を経ていつしか爆竹は厄除けとして使われるようになる。

 悪いものが家に入ってこないように。

 引っ越しや結婚など慶事には玄関前で爆竹を鳴らす。

 それと同時に花火も打ち上げる。

 昼間のそれは煙と音だけのものだが、夜に打ち上げるそれは色鮮やかな光の花を咲かせる。


 日本では資格がないと打ち上げられない花火だが中国では誰もが打ち上げることができる。


 民家の軒先で

 マンションの中庭で

 店の前の舗道で


 マジェンタピンク

 サンシャインオレンジ

 ゴールドイエロー

 ライトグリーン

 ネオンブルー


 藍色の夜空そらに咲く色とりどりの華


 年末

 新しい年を迎える厄除けに爆竹が鳴り響く。

 花火も打ち上げられる。

 12月31日から1月1日に変わる瞬間

 轟音とともに空一面に極彩色の花が咲く

 窓の外が深夜とは思えない光を放つ

 閃光が闇を覆う

 東西南北どこを見渡しても

 至近距離から遠方まで

 果てしなく打ち上げられる光の花々


 来るべく新しい年がよき年であるように

 穢れなき1年であるように

 人々の願う数だけ打ち上げられる花火と爆竹


 国が変われば新年の迎え方も願い方も異なる。

 そんなことを感じることのできた中国での1月1日だった。



 新年快乐シンニェンクウヮイラー(新年快楽)

 A HAPPY NEW YEAR!

 謹賀新年


 来たる2017年が素晴らしい年でありますように




【描写した場所】

 中国・駐在地(場所非公表)

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