【第三章 泡沫家族 要約】
(第109話~第172話まで)
家族3人で昼飯を食べていると、6歳になる娘のZが問いかけた。
ココは何処なのか。ここは入国管理局の食堂だ。
ココで何をするのか?
ママが日本に来るのを、入管がダメだと言うから、パパとママはズルをやった。
ズルをして、ママは日本に来てお前を産んだ。
今から入管に行って、ズルをした事を正直に言って、ゴメンナサイと謝りに行くのだ。
「だいじょうぶ?」、そう訊くZに大丈夫だと答えた。
全く以て大丈夫ではなかった。
この入国管理局への自主出頭を機に、娘のZの日本国籍が消滅し強制退去の対象となる。
そんな話が持ち上がる事になった。
入国管理局からは、「戸籍上の妻Y(Xの偽名)を
子のZの母親もだ。 戸籍上、Zの母親もまたYと記載されている。
この指示は、Xの在留資格を法的に発生させよという事だった。
Xの本名での、Tの戸籍への入籍。 当初は、簡単に思えた。
日本人同士の夫婦でも、他人名義の婚姻というのは有るもので、その処理方法は概ね2つある。
ひとつは婚姻無効確認訴訟で婚姻を消除し、改めて再結婚する方法。
もうひとつは、戸籍訂正許可の審判で、戸籍上の偽名を本名に訂正する方法。
家庭裁判所は戸籍訂正許可を受理可能としていた。
すぐにXは市役所で、改めて本名での外国人登録を申請した。
半年後、警察の取り調べが終了しXが書類送検された頃に、ようやく外国人登録証が交付された。
あとはXのパスポート発行を待ち、家裁に戸籍訂正許可を申し立て。
日本人(T)の妻で日本人(Z)の母。
Xが本名で入籍した戸籍謄本を入手したら、Xには強力な在留資格が発生する。
その場合は、Xにはかなりな高確率で在留特別許可が下される。
それは、簡単に出来るはずだった。
神戸の中華系行政書士、R行政書士を恃み大阪の中国領事館に、Xのパスポートを申請。
だがパスポートはなかなか発行されない。
Xが入国管理局に自主出頭してから1年が経とうとしている。
パスポートは無いまま、家庭裁判所に戸籍訂正許可を申し立てる運びとなった。
そして、状況は悪化の一途となる。
家庭裁判所は、戸籍訂正許可の申し立てを受理しなかった。
調べるうちに、「重婚は婚姻無効」、行政判断により、娘のZの日本国籍は消滅し強制退去の対象となる、という話しが浮上する事になる。
戸籍訂正が受理されないなら、もう一つの方法。
婚姻無効確認訴訟で婚姻を消除し、Zを認知して日本国籍を取得させ、改めて再結婚。
だが、その手続きも不可能。
Xにはパスポートが無く、独身証明が取れないからだ。
Xの入籍が出来なければ、在留特別許可の可能性は殆どゼロ、Xは強制退去となる。
なのに、Xを入籍できる可能性はゼロとなった。
下手に手を付ければ、子のZまでが強制退去となってしまう。
法律家が全員、答えを見出せない難問の解。
有る筈のない法手続きを探し続ける、T。
そうするうちにも状況は悪化していく。
外国人登録制度が廃止となり、Xは外国人登録証をも失った。
本国の居民身分証も期限が迫り、失効の危機。
パスポートは発行されない。
そして遂に、Tは奇策を見出し、動き始めた。
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