二学期⑤「また会えて良かったです」

 それは教室移動の時でした。

「あっ?」

「あら?」

 なんと清風院さんと邂逅を果たしたのです。僕はあれ以来彼女と会っていませんでした。

「山口さんじゃないですか」

「うん。清風院さん、久しぶり」

「はい、お久しぶりです」

 清風院さんは柔らかく微笑みます。彼女は以前と変わらず(正確に言うと制服が変わっていましたが)可憐で、僕はその笑みに見惚れてしまうのでした。

「あのさ、清風院さんって何年生?」

 気になっていたことを尋ねてみます。僕は何故あれから会えなかったのかを密かに考えていたのです。

「二年生です」

「やっぱし」

 やりました、僕の推測は正しかったのです。どうりで見かけなかったはずです。上履きの色もばっちり赤。二年生です。ですが僕は無意識のうちに彼女を同学年だと思っていたのでした。迂闊でした。

「もしかして山口さんは……」

「ああ、うん。僕は一応三年」

「先輩、だったんですね。すみません、私気づかなくて……」

 清風院さんはそっと口元に手を当てます。か、可愛い……!

「いいよ。大したことじゃないし」

「そうですか? 山口さんが優しい先輩で良かったです」

 そしてまた可憐な笑み。僕の胸はラブずっきゅんと言ったところでしょうか。えへへ。

「やあやあ骨折。何こんなところでしてるんだい?」

 清風院さんに萌えていると、ひょっこり猫山田さんが現れました。彼女は不思議そうに清風院さんを見ます。

「あ、猫山田さん。彼女が前に言った転校生だよ」

「あの一緒に仲良く登校した?」

「うん、そう」

 へえ、と清風院さんをじっと見ます。

「初めまして。清風院華音です。どうかよろしくお願いします」

 ぺこりと可愛らしく清風院さんはお辞儀をします。可愛さ倍増です。やばいです。

「うん、猫山田猫美。よろしく。なるほど、確かに可愛い子だね。骨折の鼻の下がのびているわけだよ。こののびのび具合はゆとり教育なみだね」

「失敬な」

 僕は不服を唱えました。たとえ僕の鼻の下がゆとり教育なみにのびのびしていたとしてもそれは仕方ないことです。必然と言って良いでしょう。枝から離れた林檎が地面に落下することくらい自然な事象です。

「ところで骨折、そろそろ行かないと遅刻するよ」

「あ、うん。それじゃあ清風院さんまたね」

「はい、また」

 僕と清風院さんは仲良く手を振って別れます。猫山田さんは「しょせん骨折もただの男か」と呟いていました。男で何が悪い。



 こうして二学期は過ぎていきます。

 十月、文化祭がありました。体育館の入口で偶然寺原さんと会ったので、一緒に清風院さんのクラスの演劇を見ました。ヒロインの清風院さんはやっぱり可愛かったです。月島君はさおりん同盟を結成して騒いでいました。そして柴田さんがよくわからない男と手を繋いでいるのを見ました。マロはいつも通り五月蝿かったです。

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