第24話 戦争の終わり

 サーラナを首都とするサーラナ地方は、翌日の暫定最高権力者であった外務補佐官長の降伏を持って集結した。彼は、スロット一行の脱出劇には含まれなかった、外様である。だが、皮肉なことに彼は天命を全うした。傀儡としてだが、カリメアの一部となったサーラナの首長に任命され、特に大きな動きをすることもなく次代にバトンを渡した。結局、カリメアは周辺国ともどもサーラナをそのまま存続させた方が利が大きいと判断したのだろう。戦争で甚大な被害が出たのは首都だけであった。

 スロットを欠いた商会は、カリメアから流入した商人たちの勢いに勝つことができず、内紛により瓦解しその権勢は消え去った。市民たちはいつもと変わらない、頂上がどうなろうとも、自分たちの生活に影響しなければ然程頓着しないのだ。金を吸い上げる相手が、変わっただけだ。

 ザハード達は、リオを討ち逃がしたことで責を負わされ任務を解かれた。市民権の取得の機会がもう訪れないと踏んだ彼らは、あっさり傭兵ともならず者とつかない職業へ鞍替えした。その後はサーラナの宿屋を拠点に、あちこちへ遠征する日々だった。任務をしくじり、見捨てられた惨めな連中、それが一般的な眼だ。だが、彼らは気にしていなかった、未練がないとは言わないが自由な事も増えたし、宿屋は居心地が良かった。マロロに両腕を砕かれた男は、その後宿屋の娘と結婚し堅気になった。そんな彼らにも、気がかりがあった。マロロとリオ、そして魔王の行方である。自分達から逃げて終わりではない、別の追っ手がカリメアから差し向けられただろう。巫女とは、それほど危険なのだ。だが―。

 

「死ぬわけないよなあ」


 仕事の終わり、酒盛りが始まると決まって彼らはこういった。マロロが、あの自分たちを出し抜いたマロロが、そう簡単に死ぬわけがないと信じていた。

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