第21話 何度目かの茶番

 同じころ、マロロとリオ、ザハード一行はもう一つの隠し通路でにらみ合っていた。いや、にらみ合っているのはリオとザハードだけだ、マロロは、阿呆みたいに魔王を握ったままザハードを見つめていた。


「おい! お前ちゃんと……」

「伝えましたよ! 待ち合わせ場所にあいつを置いてるんですから!」

「くそ……」


 ザハードは仲間の1人を叱ろうとし、やめてバツが悪そうにマロロを見つめた。


「あ~、なあマロロ?」

「ザハードさん……みんなもどうして?」

「おばか」


 リオが、惚けるマロロを、後ろから小突いた。


「敵に決まってるでしょ」

「そうなんだよなあ」


 ザハードが、頭を掻く。


「カリメアの指令か、刺客よ」

「2級市民権がもらえるんですよ魔王様」

「え? え?」

 

 魔王が嬉しそうに笑う。


「小僧よ、こやつら中々食えぬぞ。貴様よりよほど面白い」

「どうも」


 この間にも、じりじりとザハード達は距離を詰めていた。リオを集中させ魔法を使えないように重圧をかけているのだ。


「いい? あたしを殺そうとしてるのよこいつらは。敵の巫女なんて厄介なだけなんだから」

「おっしゃる通りで」

「ふん、最後まで抵抗してやるんだから。絶対命乞い何てしないわよ」

「え? え?」


 マロロは、まだ状況が掴めなかった。いや、わからないようにしていた。何故ならそれがわかってしまうと、自分が立っていられないと本能的に察していたからだ。


「ザハード、どうする?」

「マロロがいたらの戦法で、いくしかないだろう。わかってるよな?」

「ああ」


 痩身の男が、小さな玉を取り出した。


「煙幕玉だ、はじけると煙が流れるぞ。このような閉じた場所で使うのだ、奴ら自らを護るものを持っているぞ」

「ご親切にどうも! マロロ! ほら、しゃんとして!」

「あ……」


 マロロの胸に、苦い粘っこいものが広がっていた。それは、裏切りによる痛みであり、同時に己の情けなさへの悔恨だった。


「う……うえええええええ!」

「きゃあ!」

「うお⁉」

「莫迦め! かけるでないぞ!」


 何度目かの、嘔吐だった。もう中身はなく、胃液が殆どだった。


 

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