第3話 魔王と小僧

 魔王は、『武器族』の王だった。

 各々に武器を形作った肉体で、他者に身を預け、斃した相手の生命を吸って生きながらえる。世に言う魔剣や伝説の武器は、多くが『武器族』であった。担い手も、それが力をもたらせば、多くは問わない。砕けぬ限り生き続け、ときによっては永い眠りについた。

 ブーメランの魔王は、かつて持ち手が決闘に敗北した際打ち捨てられ、眠りについた。やがてそこに根付いた人間に聖具とみなされ、祭壇に飾られることになる。

 そこが、マロロの村だった。彼を救ったのは、意図してではない。錆びぬよう、綻びぬよう、普段から発していた微弱な力の中にたまたまマロロが入っただけだ。

 目覚めて初めてマロロを見た魔王の心境は、失望の一色。

 それまでの野心に燃え、勇猛に戦った戦士とはあまりにも違う。ひ弱で情けなく、矮小。およそ担い手にふさわしくない。


「まあ、たまにはいい」


「え?」


「なんでもない」


 にもかかわらず共にいるのは、その言葉に尽きる。

 生涯初めて見る種類の担い手、一から自分色に染めるのも悪くない。そんな稚気。

 混沌に放り出された羊を、自分の知恵と力でどこまでいかせるか。魔王の悪趣味な遊びなのだ。ただでさえ扱いづらいブーメランに、軟弱な少年。

 後に世界の鍵を握り、各地に伝承の残る存在になろうとは、誰も、彼らすら思いもよらないだろう。

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