自分で自分の親になる

 前の項目に出した例と関係のある話なのですが、自分の心の中に自分の親がいると考えるのは、必要のない怒りなどが生じにくい安定した心をもつために有効な方法です。  

 有名な心理学者のエリクソンもこの方法を実践していました。フルネームをエリク・H・エリクソンといいますが、エリクソンというのは後からで自分でつけた部分です。エリクソンは、エリクの息子(ソン)という意味で、彼もまた、自分が自分の親になることで自分の心理的課題を克服しました。

 大した心理的課題を抱えていない人から見ると「なんのためにそんなことをするんだ」という感じですが、親との関係に問題を抱えている人、「親に対する怒りが湧いてくる」という人などには特に有効な方法です。

 「我が息子(娘)は~しておる」

 「我が息子(娘)は~である」

 と心の中で自分に対してつぶやいてみる。あるいは独り言を言う。

 というのが、具体的なやり方です。例えば「我が息子は、今日も張り切っておる」「我が息子はスナックに行こうとしておる」「我が息子はパチンコでお金をすってしまおうとしておる」等々、簡単なつぶやきで十分です。

 それに対して、

 「そうなのですよ、お父様(お母様)」

 「褒められたのですよお父様(母様)」

 「もっともなご注意です。お父様(母様)」

 などと返して、心の中で一人二役を演じます。

 話は変わりますが、私は囲碁が趣味でたまに碁会所に行くと「○○なのですよ。お父様」などと言いながら囲碁を打っている人がいます。あれは、そう言っている方が自分を客観視できて冷静に着手を選べるということがなんとなく感覚的にわかっていて、ああいうふうに言っているのでしょう。

 それと似ています。

 単に心の中でつぶやいたり、ぶつぶつ独り言を言ったりするのも効果がありますが、ツイッターかmixiの日記等を利用して書き込んでいく方法もあります。

 「我が息子は~」なんていうのを人に見られると恥ずかしいので、自分だけにしか見えないようにする方がいいかもしれません。ツイッターだったら、人に知らせずフォロワー及びフォローが零のアカウントを持ち、それを使ってどんどんつぶやいていきます。mixiの日記であれば、非公開にして書きます。

 両方使って、普段の短いものはツイッターを使い、たまに「父親から息子への手紙」みたいな長いものを書くときにはmixiの日記を使う。という使い分けもできます。

 このやり方は、あまり知られていません。すごく不思議な行動で、心理的な課題を持っている人向きです。でも、カウンセリングにかかったりするのに比べれば費用もかからず、相手がいなくてもできて意外な効果があり、お薦めです。

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