第39話 ウィングワークマン
「どっちが早かった!!(×2)」
新旧のワークマンがどちらの方が素早く翼交換できたのか判定を求めてカートスにつめ寄る。
「むさい男が鼻息荒くして近づくな」
カートスはせまり寄る男二人を押しのける。
「二人とも同着じゃ」
「同着」
「チィ!」
ナグリは静かに悔しがりダンは大きく舌打ちをした。
「おぬしら特訓の目的を完全に忘れておるだろ」
「あ」
これは競争ではなくあくまでも訓練である。
完全に忘れていたと顔にだすダン、この特訓で重要なのはワークマン同士の勝ち負けではなく交換の速さである。
「それで、何秒でした」
ナグリも熱くなっていたので誤魔化す為にタイムを訪ね、カートスは計っていた水晶球を二人に見せる。
「9.84秒じゃ」
「……9.84秒ですか」
ナグリが難しい顔になった。
「一発で目標クリアとは、なかなか優秀じゃな」
カートスの表情からして早くても数時間はかかると思っていたのだろう。この二人のワークマンは新監督が考えていたよりもはるかに優秀であった。このタイムなら第1回トライアルに勝ったマグマフェニックスのチームのタイムと同等である。
もしもの話、あの時の翼交換がこのタイムでおこなわれていれば、勝っていたのはライトかもしれない。
「これならレースの参加を認められるの、見事じゃ」
「いえ、まだまだです」
「なんじゃと?」
褒めるカートスの言葉をナグリは受け取らなかった。
「そうだな、まだまだだな」
いがみ合っていたダンもナグリに同意する。二人は使用した工具を拭ってまたライトの左右の位置についた。
「なにを言っておるんじゃおぬしら」
「ダンさんは途中でスピードを上げました。最初からあのスピードでやっていれば、タイムはもっと縮んだはずです」
目上への遠慮が一切ないストレートなナグリのものいい。
「テメェだって同じだろうが、俺のペースアップに合わせてスピート上げたじゃねぇか」
ダンもナグリの態度など気にせず対等な立場の者として言い返す。
「だからまだまだと言った、もう一度だ」
「望むところ、今度こそぶっちぎってやる」
「タイムキーパーのカートスさん。スタートの合図お願いします」
ドライバーのような会話をするが、彼らはウィングワークマンである。
「いや、ナグリくん。わしは監督でタイムキーパーではないのじゃが」
「細かい事はきにするな、早くはじめろジジィ」
カートスが監督であるという認識ゼロのダン。
言い返す気力のなくなったカートスはタイムの記録係りに専念する。
「あの~ 私はずっとこのままなの?」
「大丈夫だ、俺を信じろ」
「ちょっとナグリ!!」
何を信じろというのか?
その後、一晩中行われた翼交換特訓のタイムトライアルは、タイムを二秒以上縮める結果を残した。シェルという尊い犠牲のもとに。
作業場をドラゴシン山から顔を出した太陽から白い光を降り注ぐ。
「白くていい光だな」
ナグリは太陽の光をいっぱいにあびて背筋をのばす。
「この、白バカ~!!」
そんなナグリに、足が攣って立ち上がれないシェルが罵声をあびせる。案の定シェルの腰から下がまた濡れていた。
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