2-2
結局、敬子はカニを二杯買わされた。
まぁ、半杯分はお得だったんだから、いいんじゃないの?
その前に、ちょっとした観光もあった。
東尋坊という場所は自殺の名所だそうだ。
別に自殺したくなるような気分じゃない。
いちいちそこまで落ち込んでいられない。
遙香とは、実に小学生の頃からの付き合いだった。
校区が一緒で、小中学と同じ学校に通い、高校で進路が別れた。
わたしはそこそこ有名な進学校を経て、そこそこ名の通った大学へ。
彼女はお世辞にも勉強が出来るとは言い難く、どこかの専門学校へ。
その頃までは、確かにわたしの方がリードしていたのに、いつの間にか差を開けられたと感じていた。
アニメーターを目指した彼女は途中で進路を変え、デザイナーコースへ乗った。
大学も、しっかりとした目標意識を持って進み、確実なキャリアアップを図って世間へ出た。そしてわたしは……、何になりたいかも決めず、なんとなく、面接にパスした事を幸いと適当な商社に収まった。
「紗江は、将来のビジョンっての、持ってないよね。」
二人でお茶した時、ティースプーンを振りながらで遙香はそう言った。
「石油王になりたいかも。徳川の埋蔵金探しでひと山当てるわ。」
「あははっ、アレってその土地の人に権利取られちゃうらしいよ?」
むろん、石油王も埋蔵金ハンターにも本当になりたいわけじゃない。なりたい自分、こうだといいな程度の夢ならあるけど、それに向けて努力しているかと言われると。肩を竦めて冗談で誤魔化してしまった。
荒唐無稽で実現確率の低い夢物語だから。
努力でなんとかなるセカイじゃないから。
そんな言い訳で真面目に努力することに手を抜いてきた。
「ねぇ、もう漫画は描いてないの? 紗江。」
一度の投稿もしたことはない、けれどもずーっと、将来は漫画家になりたいと口癖のように言っていた。
「何事もやってみなくちゃ解かんないよ?」
「うん。まぁ、そのうちにね。」
適当に言い訳して、挑戦することから逃げてる間に時間だけが過ぎた。
漫画家って年齢が若い方が有利だっていうじゃん。
そろそろ年齢的にも、ギリギリかなって、危機感は感じていた。
「宝くじだってさ、買わなきゃ当たらないんだよ? 賞に応募するって、中学の時からずーっと聞いてるけど、いつ、投稿すんのさ。」
怒ったように、遙香はわたしをせっついた。
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