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漫画が縁で長い付き合いになったと思う。
同じ学校で、高校で進路が別れたのにその後も付き合いが続くなんて思わなかった。お互い一人っ子で、姉妹のように感じていたからかも知れない。
インターネットのSNSで、一度繋がった友人関係はほんの少しの努力を払えば維持し続けられる。なにより遙香とは、気が合ったのだ。
祐介よりも長く付き合ってきた仲だった。
わたしの事を、誰よりも理解してくれてる友達だった。
眼下に見下ろす絶景は、いったい何十メートルほどの高さなんだろう。
白い波しぶきが断崖絶壁にぶつかっては砕け散っていく。泡立つ潮はまるで洗剤を入れた洗濯機みたいだ。
「よくそんな所に立てるな、怖くないのか?」
「課長。」
声に振り返ると、坂崎課長が距離を置いた後方に立っていた。
「距離ありますし、平気ですよ?」
「サスペンスの定番は必ずそこから落ちるんだ。」
縁起でもない事を。
でもまぁ、企画室という部署は色々と変わり者でなければ役には立たないか。
噂でそう聞いてる。
「まだ顔色が悪いようだが、大丈夫なのか?」
大丈夫だ問題ない、と答えたいところだったけど無難に頷いておいた。
往年のギャグが通じる人だとも思えなかった。
「もう一人は別行動か?」
「田中です、田中敬子さん。」
「ああ、そうか。」
あんまり彼女には興味がないんだなと解かってしまう返事だった。
観光と言っても、ここには断崖絶壁以外に見るべきアトラクションはない。
ちょっと大きめの休息所があり、パーキングエリアが広くて観光客を一手に引き受けている感じだ。今日のところはわたし達のツアーバス以外の観光客は見えなかったけど。
それにしても課長はなんの用で来たんだろう。
なんて言ったらまた自意識過剰か。観光地へは観光に来たに決まってる。
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