第二話 予感は必ず当たるもの

2-1

 カーテン越しにお日様の光が車内を照らしていた。

 バスは夜通し高速道路を走り、朝には北陸へ入った。


「甲府ワイン買ってきたよ。」

 ほくほく顔で室長が課長に言っていた。

 わたし達がお茶したあのパーキングか、なかなか抜け目ないなぁ、室長。


 あの後、バスはノンストップに近い形で夜間の高速をひた走り、わたし達は車中泊ということで消灯になった。

 途中、何度かパーキングでのトイレ休憩はあったらしいが、わたしはまるで気付かず眠っていた。敬子はあまり眠れなかったと文句を言っていた。誰か、いびきの酷いのが居たんだそうだ。


 イマドキ、社員旅行というのも珍しいと思うのに、わざわざ関西圏まで出掛けるってのがまた。そう思っていたら、社長の親類が旅館をしていて、思いっきり縁故の贔屓だった。不景気だもんね、うんうん。


 バスは北陸、越前へ。

 海岸線の傍を通っているのだろう、黒々と光る日本海がずっと続いていた。

「どーせなら冬に来たかったよね、カニとか。」

 確かに。季節を外したら来る意味がなくなってしまう地域かも知れない。

 そんな風に思っていたけど、朝早い時間に辿り着いた越前のフィッシャーマンズワーフは最高だった。朝食をそれぞれで取った後には、たっぷりめに自由時間。


 市場をぷらぷらしながら新鮮な魚介を見て歩く。

 郵送で凍ったままを時間指定で届けてくれるから、お買い物が楽。

 なにより安い。

 同棲している祐介はよく食べるから、たっぷり買い込んでも大丈夫。

「カニあるよ、カニ。どーしよーかなー。」

 敬子は冷凍カニを前に頭を抱えていた。


「優大くんだっけ? カレシにお土産したらいいじゃん。」

 敬子は付き合って三ヶ月のカレシにデレちゃっている。くねくねと身体をよじり始めて、店のおじさんに冷やかされて焚き付けられていた。

「お。お姉ちゃん、彼氏が待ってるのかー。じゃあ、割引してあげないとねぇ。」

「えー、いや、まだ買うと決めたわけじゃぁ……、」

 これはたぶん買わされるね。うん。


 わたしにも、こんな風に純粋に恋愛を楽しめた時期があったかな。

 他の人なんか目に入らないくらい幸せで。

 二人だけの世界って感じで、誰もそこには入ってこれないんだって思っていた。

 簡単に壊れてしまうと思い知るまでは、無敵に思えたものだった。

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