サプレッサーについて

 今回はサプレッサーについての解説です。

 その中でも銃口に装着する円筒形の部品、いわゆるサウンドサプレッサー(減音器)と称される物の方で、マズルフラッシュの低減などを目的としたフラッシュサプレッサー(消炎器)の解説は別途で枠を設けてありますのでそちらをご覧ください。


 サプレッサーとは、主に銃の発射音を低減させる役割を持つもので、昨今では様々な形状をしたものが登場していますがその多くは筒状形をしており、主な装着部位は銃口部となります。というか銃口に付けないとほぼ意味はないと思われます。


 ですがサプレッサーも万能ではなく、完全に音を消す事はできません。とはいえ完全消音自体は難しくとも、発砲音を低減することにより銃声を遠距離まで響かせるようなこともないですし、距離感や発砲位置を錯覚させるという効果も期待できるので無駄ではありません。


 また、サプレッサーの消音効果はどれも一定というわけではなく、銃・サプレッサー・弾、この3つの性能で大きく変わり、先程完全消音は出来ないと書きましたが中には本当に発砲音を消し、銃の作動音しか聞こえなくなるような状態にまでもっていける場合もあります。

 なのですが、ここで注意してもらいたいのが、サプレッサーの減音機能は『銃口から出る音』を低減させるだけ、ということです。

 つまり、他の部位から漏れる音や銃の作動する音はサプレッサーでもどうしようもありません。


 例えばオートマチックの拳銃は、発砲時にスライドが後退してしまうので排莢口から音が漏れてしまいます。

 そして銃の作動音、ハンマーが落ちる音やボルト・スライドが動く音などもサプレッサーで消すことはできません。

 弾が音速以上で飛んだ時に出る衝撃波の音も消すことは出来ませんが、この場合は以前紹介したサブソニック弾 (亜音速弾)を使用することで解消可能です。 

 リボルバーの場合は一部を除き、構造上どうしてもシリンダーの間に隙間ができてしまうのでサプレッサーを用いても大した減音効果は期待できません。

 

 また、サイレンサーの種類もいくつかあり、銃口にねじ切り加工をしてあるものに締め込むタイプの物、フラッシュサプレッサーや銃身の溝にレバーで固定し素早い着脱が可能なタイプ、銃身自体がサプレッサーとなっている銃本体と一体型など様々なものが存在します。

 しかし、多くの銃はサプレッサーを装着することを前提として作られていませんので、基本的には装着するための加工を施さねばならなかったり、必要な部品を事前に装着する必要があります。さらに拳銃などではサプレッサーでサイトが隠れてしまい、狙い辛くなるなどの問題が発生することもあります。


 次は、どういう状況でサプレッサーは使われているのか、です。

 軍の隠密作戦などをイメージしてしまいがちですが、実際にはその他にも様々な用途で使用されています。

 例えば発砲音を低減するので耳を保護する目的でサプレッサーを使用する場合もありますし、装着したサプレッサー分銃身が延長されることにより初速が向上する場合もあります。さらにはフラッシュサプレッサーと同じ消炎器としての効果も発揮できるので、減音ではなく消炎目的で装着されることもあるでしょう。この場合はリボルバーでも効果を発揮するので、消炎目的でならリボルバーに装着する事にも十分意味はあります。


 これはサプレッサーだけに限った話ではないのですが、サプレッサーのような銃口を覆うアタッチメントを装着したり、あるいは通常の既定値より多い、または少ない装薬の弾薬を使う場合、ガス圧作動式の銃はどうしても動作が不安定になります。そういった場合に備え、銃にはガスレギュレーターという部品がついているものもあります。自衛隊の89式やFNのSCAR辺りが分かりやすいですかね?フロントサイトと銃身の間辺りにある丸っこいダイヤル型の部品です。これをひねることにより銃身からガスの通り道に入るガスの流入量を調整し、サプレッサー装着状態や減装弾仕様時など銃の状態に合わせて切り替えることで正確に動作させることができるという部品です。完全に閉鎖させて動作しないようにすることも可能なようですね。

 あんまりサプレッサーそのものには関係ないかもしれませんが、こういう部品もあるんだなくらいに覚えておいていただければ。


最後に、度々サプレッサーかサイレンサーかという名称に関する議論が出ますが、ぶっちゃけこれはどちらでも構いません。意味云々はともかく海外ですらsuppressorとsilencerは特に明確な区別をされるわけでもなく自由に使われているようですので、お好きな方をお選びください。ちょっと前までは日本だとサイレンサーの方が通りが良いように感じましたが、最近はサプレッサー表記の作品も増えたためかサプレッサーでも割と通じるような気もしますね。とはいえ、その手の作品に触れない方にはサイレンサーの方が無難な気もしますが。

 創作関係の方は、狙う層にあわせて伝わりやすい表現を選びましょう。

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