p5 後藤さんの拘束

そして、多村の危惧したことが現実となった。

2015年1月18日

訪問先エジプトで首相は演説。

『日本政府は、中東全体を視野に入れ、人道支援、インフラ整備など非軍事の分野で、25億ドル相当の支援を、新たに実施いたします。イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します』


これに対して、イスラム国は首相の声明に抗議する形で、

2015年1月20日

拘束している日本人人質2人の姓名を明らかにした上で、2億ドルの身代金を要求し、72時間以内に入れられなければ、二人を殺害すると脅迫する映像をインターネットで公開した。


一般の国民はGさんがイスラム国に拘束されていたことを初めて知った。そしてこの脅迫映像に驚愕した。


その後の経過は

2015年1月21日

首相は中東訪問を途中で切り上げて帰国し、同行していた中山泰秀・外務副大臣をアンマンの現地対策本部に向かわせた。


1月21日 21時09分 NHKの報道

NHKは、イスラム国の広報担当の男に、20日夜(日本時間の21日未明)、インターネット上のメッセージのやり取りで取材を行いました。この中で広報担当の男は事実上犯行を認め、「金が必要なのではない。『イスラム国』は、この金額より高い金を1日で使っている。経済的な戦いではなく精神的な戦いなのだ」と述べて、資金の獲得だけが目的ではないと主張しました。そのうえで「あなたたちの政府は金を払う」と繰り返し述べ、日本政府が2人の解放と引き換えに身代金を払うという見方を示しました。今回の映像が出されてから、イスラム国の関係者が取材に答えたのは初めてで、断続的な1時間ほどのやり取りの中で、男は72時間の期限があることを認めたものの、映像を出したときから72時間だと主張するにとどまり、具体的にいつが期限なのかは明らかにしませんでした。(引用ここまで後省略)


多村はこの報道を見て、なぜNHKが時間をおかないその当日に、IS広報担当者とコンタクトが取れているのか不思議に思った。


2015年1月23日

後藤さんの母(78)が記者会見。

多村はこの母の突然の出現になぜ、母で妻でないのか、ここに来てまで、妻は隠されているのかと思った。


2015年1月24日

Gさんとみられる男性がYさんの遺体とみられる写真を持つ映像をインターネットで公開。日本政府への要求は、身代金からヨルダンの首都アンマンでの連続ホテル自爆テロ事件に関わったサジダ・リシャウィ死刑囚の釈放に変更された。


2015年1月27日

ISがGさんの映った新たな映像声明をネットで公開映像は午後11時ごろ公開。Gさんがヨルダン軍パイロットの写真を手にしている画像を背景に、Gさんを名乗る男性が「私には24時間しか残されていない」と述べ、改めてサジダ・リシャウィ死刑囚の釈放を求めた


2015年1月29日

ISが日没までにリシャウィ死刑囚の返還を求める声明をネットで公開。

サジダ・リシャウィ死刑囚を29日日没(現地時間)までにトルコとIS支配地域との境界に連れてくるよう要求する声明をインターネットサイトで公開した。


時間が迫る中、遂にGさんの妻が英国のジャーナリスト支援団体を通じて、日本政府、ヨルダン政府に救出協力の声明文を公表する。(末尾に全文掲載)

 

2015年2月1日

ISがGさんを殺害したとする新たな動画を公開する。


この間、政府は「全力を上げて取り組んでいる」「情報を精査している」「人命を最優先に考える」「卑劣なテロには屈しない」を繰り返す。


この間、報道機関は一斉にGさんに関する映像を流し、やっと首相の中等訪問の是非、対策本部をトルコでなくヨルダンに置いた是非等を報道する。

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