春はあけぼの

「しょんなぁ〜!あたし、プレッシャーに弱いんですよぅ。」

春海が気弱な元の情けない子に逆戻りしてしまった。


「自分の気持ちを偽らなくていいんだよ春海。余計なことは考えないで、素直にキミが気になってる方を言ってごらん。」

横から夏樹が穏やかな声でアドバイスする。


「ん。うちのお母さん映画が大好きで一緒によく観るんだ。」

彼女の助言を受け、ようやく落ち着きを取り戻した春海が、率直な気持ちを夏樹に伝えた。


「ウン解ったよ。先生、『秘密の花園』に決まりました。」

頷いた夏樹が、田宮に向かって毅然と報告する。


「本当に良いんだな、浅倉?」

田宮が念を押す。


「勿論です先生。」

夏樹が清々しい笑顔で応える。


「いい友だちを持ったな、御厨。よし、このクラスの催し物は“映画”に決まりだ!」

ホッとして田宮は決定を下した。


オォーッ!田宮の大岡裁きに教室が騒然とする。


「先生、うちの兄貴が映画サークルやってて、ビデオカメラ持ってるから借りられます!」


「そうか!?それは助かるな。プロジェクターは、視聴覚室から借りるとしよう。それと・・・」



「ありがと夏樹。」

助け船に対して、春海がはにかんだ笑顔で礼を言うと、


「こちらこそだよ、春海。いい映画を作ってお母さんに観てもらおうね。そういえばボクらは美味しかったお弁当のお礼を言わなきゃいけないな。」

夏樹が微笑み返す。


「流ッ石夏樹!超カッコイイー!!」

いまだ抱き合ったままの千秋と真冬は、歓喜の悲鳴を上げ号泣していた。


こうして、春・夏・秋・冬4人の少女達のいる清涼高校1年B組による皐月祭の演し物は無事確定した。




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四季物語~The Four Seasons Story~ 赤松 帝 @TO-Y

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