春はあけぼの

その後、幾人かの生徒たちからも、バラエティ豊かな様々な意見が提案された。

春海はそのアイディアを黒板に書き出していった。

寄せられた提案を対象に、無記名投票にでの多数決によって採決を採る事になった。


田宮先生が準備してくれたクラスの生徒全員分の白紙の紙片が配布され、各々が賛同する催し物を書き記す時間が設けられた。


「それでは時間です。用紙を折り畳んで後ろから前に回してください。回収が終わりましたら、集まった用紙の集計をしていきたいと思います。わたしが一つ一つ読み上げていくので、浅倉さん、黒板に正の字を加えて貰えますか?」

春海がきりりと進行していく。


「いいよ、任せて。」

一番前の席を立ち上がった夏樹がサポートを請け負う。


前方に集まった用紙は、全て教壇上の机に置かれた缶に回収された。


「それでは、記念すべき第一票めに選ばれたのは・・・フェンシング・ミュージカル!」


オォーッ!三度めのどよめきが教室に走る。


ニヤリと不敵な笑いを浮かべた夏樹が、黒板に力強く横線を引いた。


「流石夏樹、敵に回すと手強い相手ね。」

真冬が囁く。


「ホントよね。」

千秋が苦笑いした。男の子みたいな行動力と、宝塚のスターみたいなスラリとした高身長のスタイルが男女問わず、皆の視線を惹きつけていた。

“もしここが水仙女学苑だったら、夏樹ならみんなに引っ張りだこだったろうなぁ。”

千秋は、ふと中学までの女子校生活を思い出した。




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