春はあけぼの
「そうだ、クラス委員長!おい、委員長!?御厨春海、おまえだッ!」
HRの時間、担任の田宮先生が大声で怒鳴る。
「は、ハヒ!」
自分が呼ばれているとは思ってもいなかった春海は慌てて立ち上がった。
「あーみんなも聞いてくれ。我が校では新入生の君たちの親睦も兼ねて、5月の最終週の土日曜日に学校祭の皐月祭が開催される。」
オォーッ!クラス内にどよめきが起こった。
「そこで各クラス毎に何か催し物を考えてもらいたい。まずはクラス委員長が進行役になって、皆で何をやるか決めて欲しい。頼んだぞ委員長。・・・判ったか御厨春海?!」
「ハヒ判りました!」
どうもクラス委員長の肩書きにまだ慣れない。春海は立ち上がると、教壇の前に進み出た。
「そ、それでは演し物でやりたい事があったら、手を挙げて発表して下さい。後で多数決で決めたいと思います。」
春海がドギマギしながら進行を始めた。
「は〜い」
パラパラ疎らな返事が返ってくる。
“声が小さい!もう一回やり直し、オイッス!!”
夏樹の頭の中に、随分昔、父親にインターネットで見せてもらった古いバラエティ番組の司会者の姿が浮かんだ。
「な、何でもいいです。誰かアイディアはありませんか?」
春海が小さな声で再度質問を重ねる。
ザワザワとはするものの、手を挙げる者はいない。
「何でもいいって言われると却って出てこないもんだよね。」
真冬が千秋の耳元で囁く。
「特に最初だしね。」
千秋がそっと頷く。
「あ、あの何か‥」
と、春海が三度言いかけたその時、
「声が小さい!もう一回、オイッス!!」
夏樹が教室中に響き渡るダミ声で叫んだ。
「オイッス!!」
ビビリながらも、思わず釣られた春海が大声で返す。
一瞬、教室内にシーンと静寂が波打つも、直ぐにドッと笑いが広がった。
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