春はあけぼの
サーーーッ流れる様なやさしい風に舞い、雪桜の花びらがハラハラハラとまるで本物の雪みたいに四人の上から降りそそいでくる。
「ハーァ・・・綺麗だなァ。妖精の国にでもいるみたい。」
田舎育ちの真冬でも、流石にこれほど美しい桜の花が舞い散る光景には、未だ出会ったことがなかった。真冬の大好きな北国の雪景色にも、匹敵する。
「じゃあボク達は、四季の精ってトコだね。」
男の子みたいな夏樹が素敵なことを言う。
「動いてる絵を観てるみたいだよね。ずっとずっとこんな景色を眺めながら過ごしたいなぁ。」
この雪桜を目当てに入学してきた千秋にとっては、胸がつまるほど感極まる情景で、またまた思わず涙が溢れそうになって来た。
「ゔん、ホンドだねぇ。グズン、ズズズーッ。」
隣にいる春海が涙交じりに鼻水をすする。
「ちょっと春海ったら、何も泣かなくたっていいじゃないの?!」
「ぢあきだって目真っ赤ぢゃない!」
春海が目を擦りながら反論する。
「ほらほら目を擦るとばい菌入っちゃうゾ!」
夏樹が慌ててハンカチを差し出した。
「あぢがと。ちゃんど洗って返ずね。」
春海は目尻を拭って礼を言った。
「まったく素直だねー春海は。」
真冬は心豊かな春海が大好きになった。いや、気遣いの利く優しい夏樹、明るく人懐こい千秋、ここにいる新しい友だち三人ともが大好きになってしまった。
「私さぁ、この学校来て本当に良かったなぁ~。今日という日を一生忘れない様にしようっと!」
割とクールな千秋が珍しく情感を込めて呟くと、恥ずかしそうにくるりと回った。
「あだぢも!」
「ボクも!」
「わたしも!」
それぞれが同時に力強く返事をして、続けて四人一緒に笑い合った。
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