春はあけぼの

清涼高校の校舎は上空から見るとロの字型に建てられていて、北棟と南棟に一般教室があり、西棟と東棟には図書室や様々な実験室、家庭科室や音楽室など実技科目の教室に充てられていた。階段は極力排し、各棟はスロープで結ばれている。

将来的には、高齢者が急増することを見込んで、いずれは老人ホームにリフォームされる計画でバリアフリー設計で建築されたそうだ。


そして、その校舎の吹き抜けの中庭は蒼蒼とした芝生が植えられていて、生徒たちの憩いの場となる様に、所々に石造りのベンチが据え置かれている。

また中庭の中央には、一本の大きなソメイヨシノが植樹されていた。

ソメイヨシノは山桜を品種改良した鑑賞用の桜として知られている。

その美しい薄桃の花は、日本の代表的な植物として、日本人のみならず世界中の人びとに親しまれている。

しかし、この中庭に咲くソメイヨシノは、この地域に住んでいた植物学者である研究者が特別に改良を施した種であり、通常よりもより白色に近い花をつけた。

その雪の結晶の様な神々しいまでの白さにより、生徒や教師達からは、いつからか雪桜と呼ばれ、愛され続けてきた。

在校していた兄姉から聴いて、或いは卒業生が親となり、やがてはその子どもの代が高校生となり、親たちから聴かされたこの雪桜に憧れて入学してくる新入生もいるという。



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