春はあけぼの

体育館の講堂に初々しくも緊張した面持ちの新入生達が、揃いも揃ってカチンコチンに背筋を伸ばしてパイプ椅子に固まっている。

背後からワッ!と大声でも出そうものなら、全員飛び上がって起立しそうな雰囲気である。


「ぇーっ・・・ワッ!!」

と突然、演壇に立っていた学生がマイクを通して大声を張り上げた。

案の定、吃驚した新入生の何人かが、思わずその場に立ち上がった。


「び、ビックリしたァーッ。アァーッ!校門・・・様?」

そのうちの一人だった御厨春海は、シャンとした直立姿勢のままで、壇上の学生に向かって人指し指を差した。


「誰が黄門様だ!?っておおーっなんだ?さっきの弁当女子じゃないか!!」

校門のところで発破をかけてくれた人物が満面のスマイルを向ける。


“誰が弁当女子よ!?その言葉、ノシをつけてお返ししたい”

御厨春海の食いしん坊万歳みたいな言われ様の春海は、赤面したまま小さくかがみ込んだ。





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